長年利用している業務システムでは、機能追加や改修を繰り返すうちに、システムの構造が複雑になっていくことがあります。
特に、一つのアプリケーションに多くの機能を集約したモノリシックアーキテクチャでは、一つの機能を変更するだけでも、ほかの機能への影響を確認しなければならない場合があります。
その結果、
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改修に時間がかかる
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テストの範囲が広くなる
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リリースしにくくなる
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保守できる人材が限られる
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新しい機能を追加しにくくなる
といった問題につながります。
こうした状況で検討される選択肢の一つが、モノリスからマイクロサービスへの移行です。
ただし、既存システムをすべて停止して、新しいシステムを一から作り直す方法が必ずしも適しているわけではありません。
長期間運用されているシステムには、設計書だけでは把握できない業務ルールやデータの依存関係が含まれていることがあるためです。
そのため、企業システムのモダナイゼーションでは、既存システムを動かしながら、必要な機能から段階的に分離する方法が重要になります。
本記事では、モノリスからマイクロサービスへ移行する際に知っておきたい考え方と、実際の進め方をわかりやすく解説します。
1. モノリスからマイクロサービスへ移行する理由
モノリスとは、複数の機能を一つのアプリケーションにまとめて構築する方式です。
例えば、企業の業務システムであれば、顧客管理、注文管理、在庫管理、決済などが一つのシステムに含まれていることがあります。
一方、マイクロサービスでは、業務上の役割や責任範囲を基準として機能を分け、それぞれを独立したサービスとして構築します。
Microsoftもマイクロサービスを、特定の業務領域やビジネス機能を担う小さなサービスとして説明しており、各サービスを独立して開発・展開できることを特徴として挙げています。
モノリスとマイクロサービスの違い
ここで重要なのは、マイクロサービスが常にモノリスより優れているわけではないということです。
AWSの公式ガイダンスでも、マイクロサービスには拡張性や柔軟性などの利点がある一方、システムの規模や用途によってはモノリスなど別の方式が適切な場合があるとされています。
したがって、移行を検討する際は、
「モノリスだからマイクロサービスにする」のではなく、「現在のシステムが抱えている課題を解決するために、本当に必要なのか」を判断すること
が重要です。
例えば、
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特定の機能だけ頻繁に変更される
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一部の機能だけ大きな負荷がかかる
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リリースのたびにシステム全体をテストする必要がある
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開発チーム間の作業が複雑になっている
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既存システムの保守負担が増えている
といった課題がある場合、マイクロサービス化を検討する価値があります。
2. 一括で作り直さず、段階的に移行する
モノリスからマイクロサービスへ移行するときに、最も大きな判断の一つが「一括で作り直すか、それとも段階的に移行するか」です。
長期間運用された企業システムでは、コードだけを見てもすべての業務ルールを把握できない場合があります。
例えば、
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古い機能だが現在も重要な業務で使われている
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複数の機能が同じデータを利用している
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外部システムと複雑に連携している
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担当者しか把握していない処理が存在する
といった状況です。
この状態でシステム全体を一度に作り直すと、移行後に問題が見つかった場合の影響が大きくなります。
そのため、既存システムを残しながら、新しいサービスを少しずつ追加していく方法が現実的な選択肢になります。
段階的な移行の基本的な流れ
この考え方は、レガシーシステムを少しずつ置き換えていくStrangler Fig Patternとも関連します。
Martin Fowler氏は、既存システムを一度に置き換えるのではなく、機能を段階的に新しいシステムへ移していく方法としてこの考え方を紹介しています。段階的に価値を提供しながら移行できることが、この方法の重要な特徴です。
Decision Flow:どのように移行方式を決めるか
この判断で重要なのは、最初からすべてをサービス化しないことです。
最初の対象には、比較的独立していて、移行による効果を確認しやすい機能を選ぶことが考えられます。
既存システムの刷新をどこから始めるべきかについては、以下の記事でも詳しく整理しています。
レガシーシステム刷新を成功させるロードマップ|PoCから本番移行まで
3. 移行する機能をどう選ぶか
マイクロサービス化で難しいのは、プログラムを分割する作業そのものよりも、「どこで分けるべきか」を決めることです。
単純にプログラムのファイル数やデータベースのテーブル数を基準に分けると、かえってサービス間の依存関係が増えてしまう可能性があります。
AWSの設計指針でも、サービスを分割する際には、特定の業務領域や機能に焦点を当てることが推奨されています。
そのため、まず次の観点から候補を整理します。
例えば、頻繁に変更されている一方で、他機能との依存関係が比較的少ない機能は、最初の移行対象として検討しやすいでしょう。
逆に、複数の業務にまたがる重要な機能を最初に分離すると、APIやデータの連携が増え、移行が複雑になる可能性があります。
最初の移行では「最も重要な機能」より、「効果を確認しやすく、リスクを管理しやすい機能」を選ぶことが重要です。
また、移行前には現在のシステム構造や課題を整理しておく必要があります。
レガシーシステムの課題や移行時の判断ポイントについては、以下の記事も参考になります。
4. API・データ・認証を整理してから移行する
機能を分離するとき、プログラムだけを切り離せばよいわけではありません。
特に注意したいのが、API、データベース、認証・権限管理です。
API
サービス間でどのように情報をやり取りするのかを明確にします。
例えば、
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どのサービスがどの情報を提供するのか
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どのような形式でデータを受け渡すのか
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エラーが発生した場合にどう処理するのか
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認証や権限をどこで確認するのか
といったルールを決めます。
AWSの公式資料でも、マイクロサービスでは明確なAPIを介したサービス間連携が重要な要素として説明されています。
データベース
特に注意が必要なのが、複数の機能が一つのデータベースを共有しているケースです。
アプリケーションだけを分割しても、すべてのサービスが同じデータを自由に読み書きしている状態では、以前の依存関係が残ってしまいます。
そのため、
どのサービスが、どのデータを管理するのか
を整理しながら、必要に応じて段階的にデータの分離を進めます。
認証・権限
サービスが増えるほど、認証や権限管理も複雑になります。
利用者の認証をどこで行い、各サービスがどのように権限を確認するのかを決めておく必要があります。
ここを後回しにすると、移行後にサービス間の連携やアクセス制御が複雑になる可能性があります。
5. テストと監視まで含めて移行する
マイクロサービス化すると、一つのアプリケーションだったシステムが複数のサービスに分かれます。
そのため、移行後は「一つのシステムをテストする」という考え方だけでは十分ではありません。
サービス単体だけでなく、サービス同士が正しく連携できるか、既存の業務が問題なく動くかを確認する必要があります。
特に段階的な移行では、
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新しいサービスのテスト
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既存システムとの連携テスト
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業務シナリオの確認
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回帰テスト
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切り替え後の動作確認
を組み合わせることが重要です。
また、サービスが増えると障害の原因を追跡しにくくなるため、ログや処理時間、サービス間の通信経路などを確認できる仕組みも必要になります。
その際に利用できる代表的な仕組みの一つがOpenTelemetryです。OpenTelemetryは、ログ、メトリクス、トレースなどの情報を収集するためのベンダーに依存しないオープンソースの仕組みです。
システム開発の工程やテストの考え方については、以下の記事も参考になります。
システム開発の工程とは?企画から開発・テスト・運用までの流れ
6. モリスからの移行でよくある失敗と成功のポイント
モノリスからマイクロサービスへの移行では、技術だけでなく、進め方そのものが結果を左右します。
特に避けたいのは、「マイクロサービス化すること」自体を目的にしてしまうことです。
例えば、必要以上にサービスを細かく分割すると、サービス間通信やデータ管理が複雑になり、かえって運用負担が増えることがあります。
また、既存システムの調査が不十分なまま移行を始めると、途中で予想外の依存関係が見つかり、スケジュールやコストに影響する可能性があります。
成功させるためには、次の考え方が重要です。
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目的を明確にする
開発速度、保守性、拡張性など、何を改善したいのかを決める。 -
現状を把握する
機能、データ、外部連携、依存関係を事前に整理する。 -
小さく始める
最初から全機能を移行せず、対象を絞って検証する。 -
データを軽視しない
アプリケーションだけでなく、データの管理責任も整理する。 -
移行後の運用まで考える
テスト、監視、障害対応、保守体制まで含めて設計する。
つまり、モノリスからマイクロサービスへの移行で重要なのは、「どれだけ細かく分割できるか」ではなく、「どの単位で分ければ、現在の課題を解決できるか」です。
7. まとめ
モノリスからマイクロサービスへの移行は、単純に一つのシステムを複数のサービスへ分割する作業ではありません。
既存システムの構造や業務ルール、データの関係を理解したうえで、どの機能を、どの順番で、どのように分離するかを決める必要があります。
特に長期間運用されている企業システムでは、いきなり全面的に作り直すのではなく、
現状調査 → 移行対象の選定 → 小さな機能から分離 → API・データ整理 → テスト → 段階的な切り替え
という進め方が重要です。
マイクロサービス化そのものを目的にするのではなく、開発速度、保守性、拡張性など、現在抱えている課題を明確にしたうえで移行方法を選ぶことが成功への近道です。
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モノリスの複雑化や保守負担、開発スピードの低下に課題を感じている場合は、まず現在のシステム構造を整理し、段階的なモダナイゼーションの可能性を検討してみてください。
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