長年利用してきたレガシーシステムでは、サーバーやOSの老朽化、保守人材の不足、運用コストの増加、セキュリティ対応など、さまざまな課題が発生します。
その解決策の一つとして、多くの企業が検討しているのがクラウド移行(Cloud Migration)です。
しかし、レガシーシステムをそのままクラウドへ移せば問題が解決するとは限りません。
既存システムの依存関係を把握しないまま移行すると、性能問題、データ不整合、想定外のコスト、業務停止などにつながる可能性があります。
また、Cloud Migrationでは「Rehostするのか」「Replatformするのか」「Refactorまで行うのか」といった移行方式の選択も重要です。
本記事では、レガシーシステムをクラウドへ移行する際の考え方から、事前アセスメント、移行方式、アプリケーション・データベース・インフラの移行、切替、セキュリティ、コスト、段階的な進め方までを解説します。
1. レガシーシステムのクラウド移行とは
レガシーシステムのクラウド移行とは、オンプレミス環境や既存データセンターなどで稼働している既存システムを、AWS、Microsoft Azure、Google Cloudなどのクラウド環境へ移行することです。
クラウド移行の目的は、単純に「サーバーをクラウドへ置き換える」ことではありません。
企業によって目的は異なります。
-
老朽化したInfrastructureを刷新したい
-
データセンターの運用負担を減らしたい
-
Infrastructureの拡張性を高めたい
-
Security対策を強化したい
-
Disaster Recoveryを改善したい
-
新しいApplicationとの連携を進めたい
-
将来的なModernizationにつなげたい
MicrosoftのCloud Adoption Frameworkでも、既存WorkloadのCloud Adoptionでは、Business Goalに応じてMigrationとModernizationを使い分ける考え方が示されています。
つまり、重要なのは「クラウドへ移すこと」ではなく、クラウド移行によって何を実現するのかを最初に明確にすることです。
2. クラウド移行前に確認すべきこと
レガシーシステムのクラウド移行では、Migration作業よりも、その前のAssessment(アセスメント)が重要です。
2.1. 現行システムの依存関係を把握する
最初に確認したいのが、Application、Database、Server、Network、External SystemなどのDependencyです。
例えば、あるApplicationだけをクラウドへ移行しても、Databaseがオンプレミスに残っている場合、Network Latencyが新しいPerformance Issueになる可能性があります。
最低限、次の関係を整理します。
User → Application → API → Database → External Systemさらに、Application → Server → OS → MiddlewareというInfrastructure Dependencyも確認します。
2.2. Applicationを棚卸しする
Applicationごとに以下を整理します。
特にレガシーシステムでは、DocumentationだけではDependencyを完全に把握できない場合があります。
そのため、Infrastructure情報、Source Code、Log、運用担当者へのヒアリングなどを組み合わせて確認することが重要です。
2.3. クラウド移行後の目標を定義する
移行前に「成功とは何か」を決めておく必要があります。
例えば、
-
Downtimeを業務要件以内に抑える
-
Performanceを現行以上に維持する
-
Infrastructure運用負荷を削減する
-
Security Controlを強化する
-
Disaster Recoveryを改善する
などです。
目標が明確であれば、Migration後の評価も行いやすくなります。
3. 7Rから考えるレガシーシステムの移行方式
クラウド移行では、Workloadごとに適切な方式を選択することが重要です。
一般的に7Rとして整理される代表的な選択肢には、Retire、Retain、Rehost、Relocate、Repurchase、Replatform、Refactorがあります。AWSも7RをCloud Migrationの代表的な戦略として説明しています。
ここで重要なのは、すべてのシステムをRefactorする必要はないということです。
例えば、数か月以内にData Centerを閉鎖する必要があり、Application自体は安定しているのであれば、まずRehostしてCloudへ移行するという判断も考えられます。
一方、既存Applicationがすでに高いMaintenance CostやPerformance Issueを抱えているのであれば、問題をそのままCloudへ持ち込むのではなく、ReplatformやRefactorを検討するほうが合理的な場合があります。
MicrosoftのCloud Adoption Frameworkでも、Business Driverに応じてRehost、Replatform、Refactor、Rearchitect、Rebuildなどを選択する考え方が示されています。
4. アプリ・DB・インフラをどう移行するか
レガシーシステムのCloud Migrationでは、Application、Database、Infrastructureを一つの作業として考えるのではなく、それぞれのDependencyを確認しながら移行計画を設計します。
4.1. Application Migration
Application Migrationでは、
-
OS Compatibility
-
Runtime
-
Framework
-
Middleware
-
File System
-
Network
-
Authentication
-
External API
などを確認します。
特に古いFrameworkやMiddlewareを使用している場合、Cloud Environmentでそのまま動作するとは限りません。
そのため、Migration前にCompatibility Testを行うことが重要です。
4.2. Database Migration
Database Migrationでは、単純にDatabaseをコピーするだけでは不十分です。
確認すべきポイントには、
-
Data Volume
-
Data Type
-
Character Set
-
Schema
-
Stored Procedure
-
Index
-
Transaction
-
Backup
-
Data Consistency
などがあります。
特に異なるDatabase EngineへMigrationする場合は、SQL SyntaxやData TypeのCompatibilityを事前に確認する必要があります。
例えば、
Oracle → PostgreSQLやSQL Server → PostgreSQL
のようなMigrationでは、Database Schemaだけでなく、Application側のSQLやStored Procedureへの影響も確認する必要があります。
4.3. Infrastructure Migration
Infrastructureでは、
-
Compute
-
Storage
-
Network
-
Load Balancer
-
Firewall
-
DNS
-
Monitoring
-
Backup
-
Disaster Recovery
などを設計します。
CloudではInfrastructureを柔軟に変更できる一方、設計が不十分だとSecurityやCostの問題につながる可能性があります。
AWS Well-Architected Frameworkでは、Operational Excellence、Security、Reliability、Performance Efficiency、Cost Optimization、Sustainabilityといった観点からCloud Workloadを評価する考え方が整理されています。
5. ダウンタイム・切替・テストをどう設計するか
レガシーシステムのMigrationで、経営・IT部門が特に注意すべきなのがCutoverです。
システムを新環境へ移行できても、本番切替時に長時間のDowntimeが発生すれば、Business Impactが大きくなります。
5.1. Cutover方式を決める
代表的な方法には、
-
Big Bang Cutover
-
Phased Migration
-
Parallel Run
-
Pilot Migration
などがあります。
例えば、Business Criticalityが高いシステムでは、Pilot MigrationやParallel Runを組み合わせてRiskを抑える方法があります。
5.2. Rollback Planを用意する
Migrationでは「成功した場合」だけでなく、「失敗した場合」を事前に設計する必要があります。
最低限、
Migration → Validation → Go / No-Go → Cutover → Monitoring → Rollback
という判断ポイントを明確にします。
MicrosoftのMigration guidanceでも、Migration後のValidationではFunctional、Performance、Security、Costなどを基準と比較し、成功を確認するプロセスが示されています。
6. セキュリティ・性能・コストをどう管理するか
Cloud Migrationでは、「クラウドだから安全・安い・速い」と考えないことが重要です。
Security
Migration前に、
-
Identity & Access Management
-
Network Segmentation
-
Encryption
-
Logging
-
Monitoring
-
Backup
-
Vulnerability Management
などを設計します。
MicrosoftもCloud Adoptionでは、SecurityをMigration後に追加するのではなく、Adoptionの各段階に組み込む考え方を示しています。
Performance
Cloudへ移行した後、性能が必ず改善するとは限りません。
特に、
-
Database Latency
-
Network Latency
-
I/O
-
CPU
-
Memory
-
Application Architecture
などを確認する必要があります。
Cost
CloudではInfrastructureを柔軟に利用できますが、利用量やArchitectureによってコストが変化します。
そのため、
Migration Cost + Cloud Operating Cost + Modernization Cost
を分けて考えることが重要です。
また、Migration直後だけではなく、Post-Migration Optimizationも必要です。MicrosoftもMigration後にPerformance、Reliability、Security、Costを継続的に見直すことを推奨しています。
7. レガシーシステムのクラウド移行を成功させるロードマップ
レガシーシステムのCloud Migrationは、次のような段階で進めると整理しやすくなります。
Phase 1|Assessment 現行Application、Database、Infrastructure、Dependency、Business Requirementを整理します。
Phase 2|Migration Strategy Workloadごとに7Rを評価し、Rehost、Replatform、Refactorなどの方式を決定します。
Phase 3|PoC / Pilot Migration対象の一部を選択し、Compatibility、Performance、Security、Data Migrationなどを検証します。
Phase 4|Migration Design Cloud Architecture、Network、Security、Data Migration、Monitoring、Backup、Rollbackを設計します。
Phase 5|Migration & Testing Development、Test、Staging環境を経て、本番Migrationを実施します。
Phase 6|Cutover & Validation 本番切替後にFunctional、Performance、Security、Data Integrityなどを確認します。
Phase 7|Optimization Migration完了後も、Performance、Security、Reliability、Costを継続的に改善します。
このような段階的な進め方により、Migrationを単なるInfrastructure移行ではなく、将来的なModernizationにつなげることができます。
8. まとめ
レガシーシステムのクラウド移行は、単純にオンプレミスのServerをCloudへ移すだけのプロジェクトではありません。
成功させるためには、
Assessment → Migration Strategy → PoC → Design → Migration → Cutover → Optimization
という一連のプロセスを設計する必要があります。
特に重要なのは、Workloadごとに適切なMigration Strategyを選ぶことです。
-
変更を最小限にしたい → Rehost
-
Platformを改善したい → Replatform
-
Technical Debtを解消したい → Refactor
-
Architectureそのものを変えたい → Rearchitect / Rebuild
-
不要なシステム → Retire
すべてのレガシーシステムを同じ方法でMigrationする必要はありません。
Business Impact、Technical Risk、Cost、Time、Security、Future Modernizationを総合的に評価し、Workloadごとに最適な方法を選択することが重要です。
RIKAIでは、レガシーシステムの現状分析からCloud Migration、Application Migration、Database Migration、Testing、Modernizationまで、企業の状況に応じた支援を行っています。
「現在のシステムをそのままCloudへ移せるのか」「RehostとModernizationのどちらを選ぶべきか」「Migration時のDowntimeをどう抑えるか」といった課題がある場合は、まず現行環境のAssessmentから始めることをおすすめします。
レガシーシステムのクラウド移行について相談する
詳細はこちら
■RIKAIについて
高い技術と高い品質で事業を成功させる。
RIKAIはソフトウェア開発を軸に、「人と技術を中心としたビジネス」を展開しています。お客様に寄り添うことで、お客様の「真のニーズ」を把握し、本当に価値のあるサービスを提供します。私たちは、お客様と長期的かつ信頼できるパートナーになることを目指しています。
🏢 商号:RIKAI株式会社
📅 設立:2017年11月15日
👤 代表者:代表取締役 ドアン・ハイ・バン
📍 所在地:〒160‐0023 東京都新宿区西新宿6-12-1 パークウエスト5階
👥 従業員数:300名
🛠️ 業務内容:
・システム開発(業務システム、モバイルアプリ、インターネットサービスサイト、IoT・AIアプリ)
・システムマイグレーション
・システム保守・運用
・通信販売
🌐 公式WEBサイト:https://rikai.technology/
✉️ お問い合せ先:https://rikai.technology/contact


