202309090450

車椅子に身内の女性であろうか、

ふんわりとした身軽な感じの老婆を

乗せ、娘さんらしき女性が側に立って

時折、扉の上部にある数字をを眺めている。


気軽に入れそうではあるが、

それなりのお値段である和食の店内へ入ろうと、

エレベーターで待っているのである。

ただし、車椅子一台と二人の人が立つと

身動きが取りにくい場所である。


私は、先ほど、水中戦でご一緒したバディと
打ち上げを兼ねた食事に来ていたため、

「次のエレベーターにしましょう…。」

と、隣にいるバディの彼女に話しかけた。
彼女の返事を聞く間もなく、私はふいに
車椅子の老婆を介助している女性と目が合った。

そして、突然、普段なら気遣いに欠ける言葉を
私は口にはしないのだが、不思議と零れ出した。
自信に満ち溢れる人が使う言い方を感じ、
慌てて蓋をするようにしたが、すでに間に合わなかった。

「しんどかったわよね!」

介助していた女性は、笑みをこぼしながら、
ふんわりとしたやわらかい口調で話してくれる。

「いやぁねぇ、頑張ったのよ。そう言ってあげて。」

ねっ?というように笑顔で、頭を少しだけ傾け、
上目遣いでウインクしているようにさえ見えた。

「そうよね。しんどかったじゃない、頑張ったのよ。」

見ず知らずの車椅子に乗せた老婆を介助する娘さんらしき
その女性は、とびきりの笑顔で私にそう答えた。

ふと、隣にいた私のバディが気になり、
首を右に向けるが、そこに彼女の姿はもうなかった。

そして、またエレベーターの前で待つ車椅子と
それを介助する彼女に目を向けたが、二人とも
そこには姿がなかった。

彼女は、彼女の母親と一緒に母親の好きなものを
最後に食べに来たかったのかもしれない。
そして、一緒に……。

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おばちゃま、開花しちゃいました?
~りかおばちゃまの日記~

 rikachima0925

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