男は電車の中で思う。
車輪がどうとか、駆動がどうとか関係なく電車は走る。
運転手の決める方向、敷かれた線路の上を。

これはある意味人生と一緒なのではないかと。
決められた先、印された先。
そのどちらも、線路である。
ただちがうのは、決められた先は線路を変えることも敵わないかもしれない。
だが自らが他人に任せず線路のあるままにすすまず、自分が運転手だったなら。
その自分という電車は
たとえ水上だろうが、空だろうが道路でさえ走れるだろう。


男は少しばかり恥ずかしくなる。
いい年をした自分が中学生が書く詩のような事を考えてしまった。
そして同時に後悔の念が心の中に湧き上がる。

彼が今まで歩んだ道。
その道は線路から一つも、はみ出ない道だった。
他人の敷いたレールと、なんとなく運転をした自分。
それは真面目でもなく、
事故を起こすわけでもなかった。

嫌になれば逃避と名の付いた駅に止まり、
電車の疲れを癒す。

自分という電車は逃げずに進む事でより強く、真っ直ぐ自らを強くする。
それを彼はいい加減な気持ちで避けた。

いつしか駅に止まり続ける事でそれに慣れてしまい、電車は各駅停車となってしまった。

単純に溜息をつく。
逃げていた事に対してではない。
未だ自分が、中学生の詩と言って落ち込んだ
その思考から抜け出せていないということに関してだ。

逃避にしても未だ逃げ続けているので、
溜息をしてもしょうがなかった。
そんな事を考えつつ、
男は俯いている顔を正面に向ける。
まだ昼間なので日も出ていて明るく、
景色がビデオの早送りのように流れていくのがわかる。
この早送りの先には何があるのか。
新たな展開か、何も映らない暗黒か。

景色の端がニィ。と微笑んだ。
予想外の事に驚き、
男は思わずさっと眼を向ける。
そこには景色と呼ぶにはあまり色彩の少ない、肌色の生物が立っていた。

肌色の生物と言っても、それは顔から得た認識であり体にはまた別の色を持っている。
男がさらに驚き視線を下げると、
満面の笑みが彼の視界に捉えられた。
小学生くらいの活発そうな二つしばりの女の子が、
一本欠けている前歯を見せながら満面の笑みを浮かべている。

対応に困った男だが、
どうしようかと悩んだ末
とりあえず笑い返す事にした。

電車というものは、
時として思わぬ人と人を繋ぐ事がある。
いい意味で。
悪い意味で…。
Im'Running!
今日は月の出たいい夜だ。
うさぎが月で跳ねてようが跳ねてまいが、
蟹が鋏振り上げてようが美人が髪なびかせてようがいい月だ。

が、気分は如何なものか。
GW最初に相応しいよ全く。
と、ひつまぶしは今回長めにかこっと。
見てようが見てまいが。
つうか、本業やらなきゃww


男はただ、ただ、ただ、
いらついていた。
怒っていた。
憤怒していた。
猛り狂うこの気持ちを吐き出す事もできず、
ましてやそれを抑えることすらできずにいた。

理由は簡単だ。
今現在自ら作った状況に困り果て、憎み、怒り、泣き、自笑し、その全てが心の中にたまり、
ヘドロのように彼の心を覆った。


今自分が惨めなのは自分のせい。
人にこんな扱いをされるのは自分のせい。
それを打開できずに、ただヘドロが増していくばかりなのも自分が不甲斐ないせい。
全てが己のせいと彼は考えていた。
少しばかりは他のせいという気持ちを無意識に持ち合わせながら。

彼はそんな己が嫌で嫌で嫌で仕方がなかった。
自らのせいと思いつつも他人に矛先を向けようとする。

ついには心のヘドロが溜まりにたまり、
自らの感情さえ、爆発しそうなくらい恐ろしいものとなった。
これが彼のいらついている理由である。


しかし彼が全て正しくないのは明白。
あの時ああすればよかった。この時やっておけばよかった。
そんな後悔の念と他人に左右される心の弱さがまたヘドロとなって彼の心にたまる。


いつしかそれはパンクしそうなくらい膨らみ
ついには表、すなわち彼の外へと出ようとしていた。

一度はヘドロではなく既にもう魔物と化していたそれに全てを委ねようとした。

しかし、彼は同時に激しくそれを拒む。
自らと葛藤し、
その時だけは化け物を抑え込むことに成功した。




以後、彼は旅に出ることにした。
逃避といえばそれだけだが、彼にとってそれが最良の選択であり。同時にもっとも得意とした逃げ方だった。
しかし彼が毎回する一時的なものではなく、
彼がいる場所、関わるもの全てが遠ざかる所に行こうとしていた。
願わくば永遠に戻れない、そこが極楽永住の場所となるように。


先浮かばんで、こんくらいで。
眠い。