「飛行機にしたいって言ったんだ」
画面の向こうで、AJは頬杖をついている。
「でもキソプに即効で却下された」
そう言うと、ニヤリと笑った。
『そりゃそうだ』
俺は顔をしかめて、真似するように肘を付いた。
「そうか? いいアイデアだと思ったんだけど」
『キソプなら上手くやるかもしれないけど、スヒョン兄じゃな』
「それ、俺にはセンスがないって意味?」
質問には答えないで、AJは口角を上げた。
『結局、何のモチーフにするの?』
俺はニヤリと笑って、ゆっくりと言った。
「ハート」
『やっぱり』
すぐに返された声は、俺の笑みよりずっと得意気で。
「やっぱり、って予想してたみたいに」
AJは当然と言わんばかりに肩をすくめた。
その仕草を、かわいい、と感じてしまった俺は、思わず咳払いをする。
幸い、AJは気付いていないようだった。
『予想してたよ。かわいらしいの、何気に好きだから。それに』
言葉を止めたAJの、先を促す。
「それに?」
少し目を細めるようにして、AJはためらいがちに言った。
『僕の心をKissmeにあげます、とかさ』
俺は逆に目を見開いてしまう。
「詩人だね。さすがジェソプ」
照れたのか、AJは画面から顔を背ける。
『ヒョンは言うよな、そういうこと』
「まあ、ジェソプは言わないか」
『キャラじゃない』
再び肩をすくめて、AJはやっと視線を戻す。
「ジェソプの心はジェソプのものだもんな」
その身体が人の都合や思惑によって動かされてきた反動で。
誰でもすぐに気に入る自分と違って、情をかける相手を慎重に選ぶタイプだ。
『俺だけの、ってわけじゃないけど』
口の中で小さく発した言葉は、けれどしっかり俺の耳に届く。
俺は笑みを噛み殺しながら、マイクにそっと囁いた。
「俺も愛してるよ」
画面の向こうで赤くなったAJは、それを隠すようにまた顔を背けた。