シャワーを終えて部屋に戻ると、ケビンが寝ていた。
「何やってるの」
ケビンは布団を顔まで引き上げ、僕を見た。
「追い出された」
肩を竦めて、軽い調子で言う。
僕は当然ながら尋ねる。
「誰に?」
「ここ使ってる人」
ケビンが寝ているベッドの主。
つまり、AJ。
追い出された部屋を使ってるのは、ケビンとキソプ。
「じゃあ、しばらく戻れないね」
きっと気の立った猫のように、AJに追い返されるに違いない。
僕が言うと、ケビンはため息を吐いた。
「戻ってもいいんだけど」
浮かない顔で寝返りを打ち、唇を尖らせる。
「ジェソプが嫌がるのはいいけど、キソプを板挟みにするのはね」
それを戻れないと言う。
うん、僕なら。
「で、犯人のベッドで寝ていこうって?」
僕は床に座り、ベッドに寄りかかる。
まだ濡れている頭から、肩にかけたタオルに水が滴った。
ケビンに顔を向けると、細い指が僕の前髪をすくって整える。
「うん、まあね」
指はそのまま顔を撫で、唇に至る。
舌を出して軽く触れれば、ケビンは僅かに微笑んだ。
この部屋に来たのはAJの部屋だからじゃなくて。
「構って欲しくて来たんでしょ」
そう聞けば、わざとらしく目を丸くする。
「フンミンに?」
僕が頷くと、ケビンは声を立てずに笑った。
「どうかな」
まあ、認めなくてもいいけど。
こうして部屋にいることに変わりはないから。
僕は口を開き、指に噛み付くフリをする。
指はやっと唇から離れ、耳元に添えられる。
力強く引くほどの誘いではないが、充分だろう。
片腕をついて身を乗り出し、僕は目を閉じたケビンにキスをした。