Head Heated (Sooseop) | Shudder Log

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* このブログの内容はすべてフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません。

壁に置かれた椅子にもたれ、深呼吸した。
こめかみを押しながら、瞼を強く閉じる。
ぼんやりした頭痛を感じる。
どうやら。
暑さのせいだけではない。
 
隣に気配を感じて、俺は目を開けた。
横を見ると、キソプがスマホを手に水を飲んでいた。
視線に気付いて俺を見る。
 
「スヒョン兄も要る?」
 
そう言って、ペットボトルを差し出す。
 
「ああ」
 
ボトルを呷ると、思いのほか喉が渇いていたらしい。
それなりに残っていた水を、俺はそのまま飲み干してしまった。
 
「あ、悪い」
「別にいいよ。持ってこようか? まだ欲しいなら」
「いや」
 
俺はボトルを潰した。
キソプは笑顔を見せてから、手元の画面の操作に戻る。
 
「お前は?」
「僕もいいよ」
 
僅かに笑みを口許に残した、真剣な表情が答える。
体調が悪いとは思っていないらしい。
それは構わない。
けれど。
 
悪いのが機嫌だと思ったのだしたら、こうして近くに来ることは珍しい。
普段だったらフンやAJが俺に構うのを、不安そうに遠くから眺めるだけなのに。
 
俺が思わず鼻を鳴らすと、驚いたように振り向いた。
 
「何?」
「別に」
 
椅子に座りなおして、俺はまた目を閉じる。
頭を壁に預け、天井を仰いで。
片目を開けると、キソプはまだ俺を見ていた。
 
「何?」
 
今度は俺が尋ねれば、真似をするように答える。
 
「別に」
 
俺が思わず口角をあげると、キソプは首を傾げた。
 
「変なヒョン」
 
どっちが。
そう思ったが、口には出さなかった。
グループの次男坊。
家族のたとえ話ではなく、事実上の次兄。
俺に次ぐ「ヒョン」として振舞おうとしているのかもしれない。
 
「時間になったら起こして」
「うん」
 
俺は三度まぶたを閉じる。
隣にある肩に腕をかけると、手の甲に掌が重なる。
体重をかけて、わざとため息をついてみても、身体が強張る様子はない。
 
頼もしくなったもんだ。
心の中で呟く。
それから、頭を預ける振りをして、首元にこっそりとキスをした。
息を呑む音がして、一瞬にして背中が緊張するのが分かった。
 
笑いを噛み殺しながら、俺はもう一度こめかみを強く揉む。
頭痛はまだ治まりきらない。
暑さだけのせいではないだろうが、どうやら水は効いたらしい。
それに、別の方の原因も。
もしかしたら、少し軽くなるかもしれない。
 
焦ったキソプの声を遠くに聞きながら、俺は眠りに落ちた。