お馴染み浜田廣介の泣いた赤鬼を2Seopを洋風?パラレルで。
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姿を見なくなってから、数週間。
キソプはジェソプの家を訪ねてみることにした。
近くはないが、そう遠くもない。
朝早く発って、峠をひとつ越えるだけだ。
キソプは家の前に貼り紙をしておいた。
――― 出かけています。明日、戻ります。
その下には籠に入れた果物とお菓子。
子供たちがやってきても、がっかりさせずに済むだろう。
太陽が真上に来る頃、キソプはやっとジェソプの家についた。
薬草の茂る庭は、少しだけ荒れているように見えた。
アプローチを進み、ぴたりと閉められた扉の前に立って、呼び鈴を鳴らす。
「ジェソプ! いないの?」
少し下がって家の周りを見渡すと、窓の鎧戸まで閉じられている。
出かけているのだろうか。
キソプは玄関に戻り、三度目の呼び鈴を響かせる。
そしてその直後、ドアポストに挟んである封筒に気付いた。
破けないようにそっと引き抜くと、宛名はキソプになっていた。
便箋を取り出し、ゆっくりと文字を追う。
キソプ、あいつらと仲良くな。
もし俺と付き合っていることが知れたら、お前も悪い奴だと疑われるかもしれない。
だから、しばらく消えることにする。
長い旅になるだろうが、お前のことは忘れない。いつまでも、絶対に。
またいつかどこかで会えるかも知れないな。
さよなら、キソプ。健康に気をつけろよ。
どこまでもお前の友達、ジェソプ。
言葉を失って、キソプは手紙を読んだ。
変わるはずのない言葉を、何度も確かめるように、繰り返し。
何度目かの「さよなら」を視線が辿ったとき、キソプは膝を着いた。
それから、開かない扉に縋るようにして、涙が溢れるままに泣いた。