「プレゼント、何がいい?」
6月を目前にして、キソプは言った。
俺は大きく二度瞬いて、首を傾げた。
「それ、俺に聞くの?」
聞き返されたキソプは、真似をするように頭を斜めにする。
「ダメ?」
「ダメっていうか、サプライズとか好きだろ」
いつもメンバーの誕生日にどうやって何をするか企画するのはキソプだ。
だから、てっきり。
「それはそれ。プレゼントは、ちゃんと喜ぶものをあげたいの」
笑顔で、キソプは俺の肩に手を回す。
「教えてよ」
「考えてよ」
ケビンの様に眉をハの字にして、キソプは言う。
「だってジェソプは趣味が難しいじゃない」
「何だよそれ」
抗議の意を込めて、髪をくしゃくしゃと掻いてやる。
「やめてよ」
笑いながら逃げる身体を捕まえて、今度は俺が腕を回す。
「何でもいいよ」
キソプがくれるなら。
そう思いながら前髪を指で掬うと、曇った顔で唇を尖らせていた。
「それじゃ困るから訊いてるのに」
そんな顔をされても、困っているのは俺のほうだ。
まっさきに思いついたのは一つで、さすがに本人には言えない。
モノなんて要らない。
キスもハグも必要ない。
たとえ側にいなくても。
真夜中を過ぎて、おめでとう、と一言くれるなら。
一瞬でも、その頭の中を俺のことだけで一杯にできたのだとしたら。
それが何よりのプレゼントになる。
「考えてないで教えてよ」
キソプの表情はまた険しいまま。
「やだ」
俺は口許が緩むに任せて笑顔で答える。
考えて、悩んで、迷ってよ。
そうして、俺のことを心に留めてくれるなら。
それがプレゼントになるから。