後ろから抱きつかれて上を見たら、ケビンがいた。
ケビンにイヤフォンを外されると、部屋には他に誰もいないことが分かった。
俺はプレイヤーを止めて尋ねる。
「どうした?」
呼びに来たなら余計なことはせずにそう言うだろう。
仕事の場で甘えるようなタイプでもない。
そもそも、ケビンからハグしてくること自体が珍しい。
「ジェソプ」
抑揚のない声が響き、真上を向いた俺の頬が撫でられる。
照明を背にしたケビンは無表情で、その目が真剣なのか虚ろなのかも判然としない。
しなやかな指が俺の唇に触れた。
「ケビン?」
再び口を開けたとき、ケビンの顔が降りてきた。
俺は真上を向き、ケビンは後ろに立っていて、当然、合わさる唇も逆さまになる。
いつもとは違う、慣れないキス。
それでも目を閉じ応じれば、同じように戸惑っている舌に出会う。
お互いに探りながら、丁寧に口腔を侵す。
久しぶりに味わう、甘い舌と唇。
何度かの応酬の後、歯が触れて音を立てた。
唇が離れ、ケビンが忍び笑いを漏らす。
つられて俺も笑い、目を開けた。
俺を覗き込むケビンの顔には、笑みが浮かんでいる。
「ジェソプ」
「うん?」
口角をあげてやれば、その眉は更に下がる。
「おかえり」
チュッと音を立てて、唇がついばままれる。
「ただいま」
俺はケビンの顔を引き寄せて、三度目のキスをした。