さすがに投げっぱなしな気がしたので、EL視点で続き。
これで本当に終わり。
***
3分はとっくに過ぎていた。
渡すものの準備はできたし、部屋もどうにか片付いた。
もう上がってきてもいい頃なのに。
AJと話でもしてるだけならいいんだけど。
何かあったんじゃないかと、少し心配になる。
別に重いものでもないし、持って出るか。
そう思ってバッグを手に取ると、丁度チャイムが鳴った。
そのまま出るつもりで、靴に足を入れながら玄関のドアを開けると、ケビンが立っていた。
「ごめん、遅くなって。ジェソプが車で待ってるって」
すっきりした顔で、ケビンは笑みを浮かべていた。
しかし。
「泣いたのか?」
真っ赤になった目と、濡れた跡のある頬。
どう見ても泣いた後だ。
ケビンは困ったように眉を下げ、首を傾げた。
「うん、少しね」
少し?
目を腫らしているのに?
「ジェソプと何かあった?」
「ちょっと話しただけだよ」
「ケビンが泣くような話?」
責めるつもりはないが、自分の声が厳しくなるのが分かった。
「うーん、まあそうかな? 大学の話を聞いてたら、寂しくなっちゃって」
大学の話。
グループを離れる話。
「それが言ってたやつだね。僕、持つよ」
「ああ」
ケビンに貸す荷物を渡し、電気を消してドアと鍵を閉める。
俺を待って、ケビンはエレベーターの方へ向かう。
横を歩きながら顔を見つめていると、 ケビンが笑った。
「もう大丈夫だって」
「だって、泣くなんて」
寂しいとか、そういうことで。
ケビンが泣くなんて、珍しい。
「大丈夫」
エレベーターの前につき、綺麗な手で「下」のボタンを押す。
振り向いたケビンは、天使の笑顔だった。
「イライが一緒にいてくれるから。そうでしょ?」
空いている方の手で俺の手を取り、ぎゅっと握ってそのまま手を繋ぐ。
「その通り」
俺は手を握り返した。
ケビンが天使なら、守護者なんて必要ないんだろうけど。
俺は絶対に、ケビンの傍を離れない。
「仰るとおりです、天使様」
「なにそれ」
甲高い笑い声がすると同時に、エレベーターが到着を告げる。
乗り込んでドアが閉まるのを待ち、俺はそっとケビンの頬に口付けた。