小さく音を立ててドアが開き、ケビンが顔をのぞかせた。
『ここにいたんだ』
上半身だけ部屋に乗り出すと、濡れた髪から雫が落ちた。
『映画、一緒に見ないの?』
僕はイヤフォンを外して、音楽を止める。
「ホラーだって言うから。僕は見ないよ」
答えれば、そうなんだ、とケビンは笑った。
『通りでドンホも部屋にこもってるわけだ』
ケビンは部屋に入り、ドアを閉めた。
肩にかけた肩で髪を拭きながら、ベッドに座る。
「ケビンは見てきたら?」
ドア越しにも、リビングルームの楽しげな声が聞こえる。
『んー後で気が向いたらね』
でも、その声には、行く気なんて全然なさそうで。
表情はタオルに隠れて、僕は揺れるきれいな手を眺める。
その手がふいに止まって、ケビンは僕を見た。
『何聞いてたの?』
僕は外した片方のイヤフォンを差し出す。
「新曲」
ケビンは受け取って、耳につける。
『誰の?』
答えずに、僕は止めていた音楽を流す。
曲が再開した瞬間に、ケビンの顔に笑みが浮かぶ。
「僕らの」
ケビンはそのまま横になって、目を閉じた。
まだ濡れたままの髪が気になって、僕はタオルを取り、ケビンの髪を拭き始めた。