『本当はPAPARAZZIがいいと思ったんだよね』
遠くを見ながら、ドンホは呟いた。
「何の話?」
ドンホは僕を見て、また視線を戻す。
『ガールズグループのダンス、覚えるなら』
そうだ、去年のSTEPが最後になっている。
『PAPARAZZI見たとき、これだって思ったんだけど』
うん、写真を撮るポーズはキャッチーだと思う。
「けど?」
僕は言葉の先を促す。
『日本の曲だから、こっちじゃ踊れないなと思って』
言われてみれば。
「そのうち、韓国語バージョンも出るんじゃないかな」
そしたら練習しようか、と僕は訊ねる。
『そうだね』
ドンホは僕を見て、また遠くを見た。
それは確かに仕事の一部で。
末の二人に期待される役目でもあって。
でも、覚えるための時間は楽しかった。
自分達の曲のように、短い時間で完璧に叩き込む必要もない。
何度もビデオを見ながら、ヒョン達にも見てもらいながら。
最近は忙しくて、そんな暇もなかったけれど。
「練習しようか」
僕は思いついて、もう一度言う。
「明日か、明後日にも」
ドンホは僕を見て、顔をしかめた。
『明日?』
いつもの練習の後、少し時間があるはずだった。
普段なら、寝るか、ゲームをするか、何かしらのSNSに費やされるところだが、今回は僕のために使って貰おう。
「たまには二人で、いいじゃない」
笑顔を作って、ドンホの顔を覗き込む。
『分かった』
まだちょっと怪訝そうに、それでもドンホは同意した。
僕はドンホの肩を抱いて、額を寄せる。
「ビデオ、用意しておくね」
ドンホは無言で頷いて、僕のキスを受けた。