カメラがこちらを向けば、ピースの一つもしよう。
シャッターが切られるの待ってから、自分もカメラを向ける。
ドンホは笑顔になって、ダブルピースをした。
「カワイイー」
思わず言っても、末っ子には聞きなれたものだろう。
むしろ聞き飽きた言葉かもしれない。
かっこいいと言われると嬉しい、と前にも言っていたし。
『ありがと』
それでもドンホは礼を言い、もう一度くしゃりと笑った。
ケビンに負けず劣らず、さすがアイドルだなあ、と思う。
こんなに格好良くて、可愛くて、踊れて、歌えて、演技もできて、日本語も中国語もできて。
『何?』
視線に気付いて、ドンホがこちらを見る。
「自慢の息子だと思って」
笑いながら答えると、ドンホは丸い目を更に丸くする。
それから顔を横に向けて、小さく言った。
『そんなことないよ』
そんなことあるよ、と僕は言う。
「一緒にいられる僕はラッキーだ」
ドンホが黙って顔を伏せる。
その耳が赤くなっていることに気付いて、僕はドンホを抱きしめた。
「いつもありがとう」
ささやくついでに、音だけのキスをする。
『僕こそありがとう』
消え入りそうな声の後に、ぎこちないキスの音がした。