女性に対する趣味は、あまり似ていないと思う。
小柄な人がいい、とか、礼儀正しい人がいい、とか、そういうことではなく、単純に、顔の好みが。
『スヒョン兄の好きそうなタイプだね』
眺めていた雑誌を隣から覗き込み、フンが言った。
「どの娘?」
開いていたのは、最近デビューしたガールズグループの特集ページだ。
中央に大きく集合写真が載っている。
『左から二番目の娘』
見てみれば、確かに好みの顔だった。
「本当だ」
でしょ、とフンは得意気な笑みを浮かべた。
俺は同じ写真の、別のメンバーを指差す。
「フンミンならこの娘だろ?」
フンは改めて雑誌に目を落とす。
真剣に全員を見比べて、最後には頷いた。
『うん、この中ならそうだね』
当ったことに満足して、俺も笑顔になる。
「だろ」
フンは顔をあげて、大げさに賞賛してみせた。
『さすがスヒョン兄だ』
それでも悪い気はしない。
「愛するフンミンのことなら何でも分かります」
胸を張った俺に、フンはまた笑った。
『僕も愛するスヒョン兄の好みを当てました』
俺は姿勢を戻したフンの頭をなでる。
「よくできました」
それから肩に腕を回した。
「もうひとつ当ててみて」
フンは怪訝そうな顔になる。
『もうひとつ?』
俺は雑誌を閉じた。
「もうひとつ、俺の好みのタイプ」
フンは、納得した、と言う代わりに何度か頷いた。
その表情は変わらずに、顔だけが近付く。
額がぶつかるまで数cmというところで動きをぴたりと止め、フンは自信に満ちた声で言った。
『僕でしょう?』
俺はその答えに満足して笑みを作る。
「当たり」
フンが目を閉じるのを待って、俺は目を開けたまま、静かに口付けた。