ぺるけ式 12AX7 PHONOイコライザ Version2を適当に作ってみた | ぐりのあなぐら

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環境に優しいをポリシー(口実)に再利用した部品は2年以内に必ず煙を上げる(戒め)
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なんだかんだ音響から離れられない中の人です

 

一般向けの記事はいつ振りでしょうか

随分とご無沙汰しております

最近はいろいろなことに追われつつも、空いた時間に趣味でオーディオをやるようになりました

ギターはどうしたって?手首の腱鞘炎が治らなくなったので随分と構ってやれてないです。

 

 

 

半年ほど前でしょうか

オーディオ仲間の方から、東京サウンドが販売していたREXER PE100SEという

フォノイコライザを譲っていただいた(リケーシングした)ことから始まります

 

 

「レコードなんてそんな聞かないしな~」と思っていたのですが、

レコードを久々に回してみると思いのほか定位感良く、個々の楽器が生々しく鳴り

ほこり被っていたターンテーブルとLPは手を掛ければ掛けるだけ歪みが少なくなり、

思ったよりもはるかに高音質で手間は掛かるがその分楽しみ甲斐のある世界でした

 

 

それから間もなくしてひょんな事からまたフォノイコライザを手に入れました

今度はMJ誌でかつてライターしていた窪田式の上下対称回路でした

まあ、窪田式は昔からあまり良い評判を聞かないのですが、

出てきた音はPE100SEよりも中高域にエネルギー感がありレスポンスも良く低域もタイト。

ノイズも少なく「これほどにまでフォノイコライザで音が変わるのか」とびっくりしました

 

(これまたリケーシングして、ちょっと手を加えました。)

 

その後もLUXKITのA505というCR型フォノイコライザを搭載したプリアンプをお借りし

レスポンスは半導体に適わないものの、スクラッチノイズは落ち着き豊かに鳴ることに驚きました

 

この短い間にLPの見方が変わり、

半導体のフォノイコは満足しているものの、やはり真空管式のフォノイコも作りたくなりました

巷で評価の高い木村哲氏(以降ぺるけ氏)の設計したフォノイコライザをふと思い出し、

これを機に作ってみることにしました

本家URL→21世紀になってから作るPHONOイコライザー・アンプ 12AX7 Version2

 

 

 

 

さてようやっと本題です

ぺるけ氏の12AX7 PHONOイコライザ Version2は基本的なフォノイコライザ2段増幅構成ではありますが

後段の増幅段をSRPP式にすることで出力インピーダンスを低くして

接続機器の入力インピーダンスに影響されにくい構造である、という点と

フィルタ回路を介さずRIAA素子に直接DCを印加させているので時定数が少ないことが特徴です

まあ、細かいことは本家ページに丁寧に解説されているのでそちらの方が参考になると思います

 

以上のことよりシンプルで作りやすい素晴らしい回路なのですが、

使用する部品の自由度がビミョーに低いことがネックでした(各種値がE24系列である)

今回は手元にある部品(良くある数値)で、

さらに作りやすくしたい(あまりお金をかけたくない)なと思って暇な時間に考えてみました

 

(いい加減紙で書くのやめたいんですが。)

 

最も変更が厄介だなーと思ったのはやはり初段です。

プレート抵抗が360kΩ、カソード抵抗が1.6kΩ・・・もろE24なのでない。

そのほかにAC合成抵抗として存在する並列カソード抵抗の6.8k、

後段のSRPP回路からRIAA素子を介して流れてくるNF電流、

そして利得を変えてしまうと特性が狂う。

このようにたった3本の抵抗であらゆるバランスが考えられています

 

とりあえず、完成像を明確にする為基本的な数値を決めます

初段プレート抵抗は入手性を考えたり、あまり抵抗値増大させるメリットもないため330kΩ。

初段DCカソード抵抗も入手性と初速度電流の流れない範囲を考慮して1.5kΩ。

RIAA素子も正式発表のPlan4 120k/650pF+2.7M/2200pFだとやはり部品自由度が低い為、

本家ページにあるPlan2の100k/780pF+2.2M/2700pFという組み合わせを選択。

Plan2のRIAA素子のメリットはもう一つあり、公式仕様のPlan4だと合成カソード抵抗値が1.3kΩですが

Plan2にすることで合成カソード抵抗値が1.1kΩになります

勘の言い方はお気づきかと思いますが、まあ後まで解説を引っ張ります

 

 

・初段設計

 

※解説の前におことわり。各データは本家サイトのものを使用しております※

「12AX7/ECC83特性実測データ」より松下製Ep-Ip特性図

 

初段の動作点としては公式動作よりも低プレート抵抗化するため、Ipを0.5mAほどに目をつけ

かつグリッド電圧は公式動作の0.83Vあたりとします(0.5VピッチのEgカーブだとちょうど1/3だから)

動作点は動作点付近のEgカーブを参考に算出します

 

 

Ipが0.5mAのとき、Eg=-0.5V/Ep=77VとEg=-1V/Ep=123Vとなるので

動作点のEg=0.83VはEg=-1V~-0.5Vの1/3になり下記のとおりになります

 Ep=123-{(123-77)/3}=107V

 Eg=1-{(1-0.5)/3}=0.83V

 Ip=0.5mA

これで初段動作点はEp=107V/Eg=-0.83V/Ip=0.5mAあたりと定めました

 

次に初段の利得換算です

初段はDCカソード抵抗と電解コンデンサを介したACカソード抵抗の合成抵抗値になっています

つまりカソードはAC的に見てもアースより浮いており、れっきとした電流帰還増幅回路になっています

電流帰還増幅回路はカソード抵抗のAC成分と増幅率分加算されてくるので、

ある程度正確な利得を換算するには初段管の内部抵抗値が必要になってきます

 

これもまたEg=-0.83VのEgカーブを再現する必要があるので、

先の計算方式のように隣接するEg=-0.5VとEg=-1Vの特性カーブから

1/3差し引いた平均値で換算してみます

 

Ip=0.6mAのとき、Eg=-0.5V/Ep=83V,Eg=-1V/Ep=130V

 Ep=130-{(130-83)/3}=114V(Eg=-0.83V)

Ip=0.4mAのとき、Eg=-0.5V/Ep=71V,Eg=-1V/Ep=115V

 Ep=115-{(115-71)/3}=100V(Eg=-0.83V)

rp=(114-100)/(0.6-0.4)=70kΩ

 

そしてAC成分として割り込んでくるカソード合成抵抗値を換算しなければいけません

DCカソード抵抗値は部品自由度から1.5kとし、合成抵抗値はRIAA素子の比率を考えて1.1kとします

 

Rk(DC)=1.5k/Rk'=1.1kのとき

Rk(AC)=1/{(1/1.1)-(1/1.5)}=4.13k

 

これまた半端ですが、8.2kを並列にしたり

DALEのRNであれば4.12kが存在するのでそれでどうにでもなりそうです(適当)

 

最後に利得を算出する為に不可欠な増幅率を動作点付近・Ip固定で算出します

Ip=0.5mAのとき、Eg=-0.5V/Ep=77VとEg=-1V/Ep=123Vより

μ=(123-77)/(1-0.5)=92

まあ松下製なのでこれくらいっぽいですね

 

これでカソード抵抗とプレート抵抗と定数が全て算出できたので細かい計算をしていきます

Rp=330k,rp=70k,Rk'=1.1k,Rl=1Mのときの利得

 rp'=70+1.1(92+1)=172.3k

 A=92[{330//1000}/{172.3+(330//1000)}]=54.3

※330//1000はプレート抵抗と次段入力抵抗の1MΩの並列値になります

 

これまでに算出した定数を使って公式仕様での利得を算出してみましょう

Rp=360k,rp=70k,Rk'=1.3k,Rl=1Mのときの利得

 rp'=70+1.3(92+1)=190.9k

 A=92[{360//1000}/{190.9+(360//1000)}]=53.5

 

プレート抵抗を小さくしてもカソード抵抗を小さくした為、Rkの割り込み分による目減りが小さくなり

裸利得はほぼ変わらないところまで調整できてます

これがPlan2のRIAA素子の合成カソード抵抗が小さいことによるもう一つのメリットです

 

そしてあとは各部電圧・電流です。

Ep,Ip,Rpは定まっているので電源電圧は簡単に算出できます

 

Ep=107V,Eg=-0.83V,Rp=330k,Ip=0.5mAより

 Eb=107+0.83+330*0.5=273V

 

目標の電源電圧270Vあたりでうまいこと出来てますねえ

おいおい、初段カソードにはInfも流れるんだろ!それはどうなんだ!とお気づきの方もいると思いますが

 

Rk(DC)=1.5k,Ek=0.83V,Ip=0.5mAのとき

 Inf=(0.83/1.5)-0.5=0.0533mA

Rnf=2200k+100kのとき

 Ek'=0.0533*(2200+100)+0.83=123.4V

 

本家は0.044mAですが、本機ではPlan2のRIAA素子を採用しているので

DCでの総合抵抗値が低下しています。それを考慮してやや多めのNF電流が流れているわけです

結果NFの両端には123Vほどの電圧が発生し、これは公式の後段SRPPの出力電圧と同等です(122V)

Infが増加した分の約0.01mAはどうなんだって?

そんなのは真空管の誤差の範囲ですよ。

 

 

 

・後段設計

 

とはいっても一応帳尻あっているか計算してみます。

次は後段の12AX7のSRPPです

こちらは変更していない上近似値で結合してるので、わざわざ計算する必要ないんですが。

 

SRPPは上段の球が真空管抵抗として働く為、

バイアスと消費電流の変化によって内部抵抗が変動します

本機の上段Rk=1.8kですので、この場合のラインを引いて見ましょう

 

 

Rk=1.8kのとき、各Egでの内部抵抗は

 Eg=-0.5Vのとき、Ep=60V/Ip=0.278mA

   rp=60/0.278=215.83kΩ

 Eg=-1Vのとき、Ep=126V/Ip=0.556mA

   rp=126/0.556=226.62kΩ

 Eg=-1.5Vのとき、Ep=189V/Ip=0.833mA

   rp=189/0.833=226.89kΩ

 

先述したとおり、後段のSRPPは公式仕様です(ちょっとEbが上がるけど誤差の範囲)

公式の回路図を見るとSRPPの上段Ipは0.69mAとあるので、

ちょうど上計算式のEg=-1V/Ip=0.556mA/rp=226.62kとEg=-1.5V/Ip=0.833mA/rp=226.89kの

中間点あたりになります。

Eg=-0.5Vのときではrpが215kと少なめになっていますが、

見てのとおり、Eg=-1V~Eg=-1.5Vあたりではほぼ226~227kΩで安定しています

というわけで下段のプレート負荷抵抗はおおよそ227kΩになることがわかり、

 

Eb=273V/Ek'=123.4V/Rp=227k/Inf=0.0533mAより

Ik'={(273-123.4)/227}-=0.66mA

Ip=0.66-0.0533=約0.6mA

 

 

さて、ここで一つ厄介なのがNF電流であるInfです

下段のプレート抵抗として上段が227kΩほどの抵抗となっていますが、

その電流成分にはInfも含んでおり、静動作として一定電流が流入し下段電流を制限しています

つまり実質的な負荷はInfで消費する分増大しているという見方になると思われます

これらの関係性をIk'=Inf+Ipとできるため、1/Rp'=(1/Rp)-(1/Rnf)という見方ができ、

 

Rp'=1/{(1/2301.5)-(1/227)}=252k

 

Rp'=252kということが分かり、この上段抵抗管と下段増幅段の間に挟まれいている

カソード抵抗もセットにした抵抗値が負荷線になります

 

 

Eb=273V/Rp'=252k/Rk'=1.8k/Ep=(123.4-1)Vより、

Ip=(273-122.4)/(252+1.8)=約0.6mA

 

ざっくりEg=0.9V強くらいになりそうですね

実際に上の式を計算すると0.01mAずれてるって?気にしすぎ!!!

 

さて、後段の利得ですが(めんどくさいので)Eg=ほぼ-1Vと見て、Ip=0.6mAで固定したとき

Eg=-0.5V/Ep=84V/Ip=0.6mAとEg=-1.5V/Ep=175V/Ip=0.6mA

動作点はEg=-1V/Ep=131V/Ip=0.6mAと見ます

 

これより増幅率が算出でき、

μ=(175-84)/(1.5-0.5)=91

となります

 

内部抵抗はこれまたEg=-1Vで検討し、Ip=0.6mA付近の変化率で計算します

Ip=0.5mA/Ep=122V/Eg=-1VとIp=0.7mA/Ep=136V/Eg=-1V

これより内部抵抗は、

rp=(136-122)/(0.7-0.5)=70k

となりました

 

以上より、

Rl=254kΩ/μ=91/rp=70kにてゲインを計算してみます

A=91{254/(70+254)}=71.34

 

SRPPの場合はゲイン目減り分を算出するのですが、

本機では負荷として存在するものは、上段抵抗管のrp、上段抵抗管のRkだけでなく

RIAA素子のインピーダンス、負荷抵抗、接続機器の入力抵抗が入ってきます。

 

ちなみに本家ページには1KHzでの特性を主に公開されています

これに沿ってRIAA素子の1KHzインピーダンスを算出してみます

 

RIAA素子は2700pF//2.2MΩと780pF//100kΩの直列接続になっているため、

Zc=159/(0.0027*1000)=58.9k…(2700pFの1khzリアクタンス)

Zc'=159/(0.00078*1000)=203.9k…(780pFの1khzリアクタンス)

Z(1khz)=(58.9//2200)+(100+203.9)==124.46k

 

本家のRIAA素子のPlan2にも1khzインピーダンスは124kと記載あるように裏づけできました。

ただしRIAAのNF分圧として合成カソード抵抗(Rk'=1.1k)が直列に存在するので

Z'(1khz)=124.46+1.1=125.56k

となります

 

負荷抵抗(Rl=120k)と接続機器入力抵抗(Zin=47k)は並列になり、

Rl=120//47=33.743k

 

これらのことから

A'=[1/{(1/33.743)+(1/125.56)+(1/252)}]/[1.8+1/{(1/33.743)+(1/125.56)+(1/252)}]*71.34

=66.37

と約66倍であることが分かります。

前段の利得は約54倍ですので、裸利得は

Ao=54.3*66.37=3604倍

と公式仕様の3600倍と同等値です

 

ちなみに1khzでのRIAAによる負帰還分を含んで総合利得を計算した場合、

β=1.1/(1.1+124.46)=0.00876

Anf=x

 x=(1-0.00876x)*3604

 x=110.65

 

1KHz総合利得は約111倍、本家にも113倍と記載してありますので、

十分計算できているようです。

 

 

とまあこんな具合で電圧配分の裏づけが取れました

まあ、12AX7自体特性のばらつきが多く、

かつEgピッチは安定しているので多少ずれていても増幅率が変化することはありません

これは本家のページにも記載されています(言い訳)

これを見る限り初段・後段ともに十分電圧配分の調整が出来ているようです

 

とりあえずこのようにして増幅回路の後段はそのまま流用、

初段の定数は作りやすい数値に変更しながらも利得の誤差は小さくしてあります

 

 

 

さて電源ですが、本機の電源トランスはプリアンプ用のOIコアの電源トランスを流用しています

仕様は、AC100Vで440VC.T(40mA)/24VC.T(2A)/6.3V(0.7A)となっています

無負荷電圧は103V印加で496VC.T/27VC.T/7.12Vとなりました

このOIコアの漏洩磁束がどう出るか気がかりですが、

まあ、使えないことはないだろう主義ですので推し進めます。

 

B電源の仕様は本家ではトランジスタリプルフィルタとなっていますが、

本機では電源電圧に余裕があるのと、中の人がトランジスタアレルギー(予算の都合)なので

簡素なCRデカップリングで済ませます

 

整流電圧はやや目減り分を見て1.35倍ほどとします

Edc=(496/2)*1.35=335V

 

片chあたりの消費電流は前段のIp=0.5mAと後段のIp=0.66mAより

Ib=0.5+0.66=1.16mA

となり、整流出力電圧のEdc=335VとB電圧のEb=273Vより

Rdrop=(335-273)/1.16=53k

となりました

 

しかしこのままだと53kという抵抗は半端で存在しないのと、

1段リプルフィルタでは十分にリプルが除去できないことは簡単に想像できるので

途中まで左右共用にしてみます。

 

53kというと・・・33kと20kあたり。

20k分までを左右共用にして電流が倍になるので10kとし、

そこから33kで左右に振り分ける2段デカップリングが具合良さそうです

 

というわけで残留リプルをざっくり計算していきましょう

リプル・フィルタ回路の基礎/後編より「整流直後の残留リプル」

を参考に整流出力直後の残留リプルを算出します

手元に450V/47uFがいくつかあるので全部それにします

Rl=335/(1.16*2+1)=約100k

*2は左右分の消費電流、+1mAはヒーターバイアス用に消費する電流を見込んでです。

この電源負荷からグラフを読み取ると、0.045%ほどの残留リプルになるようです

 

つまり整流直後の残留リプル電圧は

Erpl=335*0.00045=150.75mV

次に左右共用のCRリプルフィルタ(10kΩ/47uF)の除去率を算出します。

47uFのリアクタンスは100hzで、基準特性その1より

Zc=159/(47*100)=33.83Ω

となり、Rdrop=10k/Zc=33.83Ωの分圧と150.75mVの入力リプルによって

Erpl'=150.75*{1-10000/(10000+33.83)}=0.51mV

 

これ以降は左右分岐で33kΩと47uFのリプルフィルタが入るので、

Rdrop=33k/Zc=33.83Ωの分圧と0.51mV=510uVの入力リプルより

Erpl"=510*{1-33000/(33000+33.83)}=0.5223uV

となりEb点の残留リプルは0.5223uVとなります

 

本家のリプルフィルタでは、平滑に47uF、3.3k/22uFのリプルフィルタ

100k/22uFのトランジスタリプルフィルタ、4.7k/22uFのリプルフィルタでEbとなっています

これらを計算すると整流出力残留リプル電圧は

Ib=(306-296)/3.3=3.03mA

Rl=306/3.03=101k(Er/Eo=0.045%)

Erpl=306*0.00045=137.7mV

 

1段目の3.3k/22uFのリプルフィルタでは

22uFのリアクタンスが

Zc=159/(22*100)=72.3Ω

Erpl'=137.7*{1-3300/(3300+72.3)}=2.9523mV

 

2段目の100k/22uFのトランジスタリプルフィルタでは

Erpl''=2.9523*{1-100000/(100000+72.3)}=2.133uV

 

3段目の4.7k/22uFのリプルフィルタで

Erpl'''=2.133*{1-4700/(4700+72.3)}=0.032315uV

 

本家の方が16倍も除去率高いですが、

後段の裸利得はおおよそ67倍程度ですので、単純計算しても

Erpl=0.5223*67=35uV

初段の内部抵抗やプレート抵抗等をざっくり換算しても初段rp=190.9k/Rp=330kより

Erpl=35*{190.9/(190.9+330)}=12.8uVと目減りします

そのほかにも初段のRlも存在するのでもう少し目減りしたり、

RIAAの低域NF成分よりもう一桁下の残留リプルになると思われます

実用十分。といったところの残留リプルでしょうか

そんなこと気にする前にOIコア電源トランスの漏洩磁束がひどければ無意味なんですが。

 

ヒーター電源のDC点火ですが、

このあたりは正確に計算するとトランスも割り込んできてだるいのでパス。

24VC.T(2A)と巻線の電流容量に余裕があるのと、両波整流で順方向電圧がブリッジより低くなることで

本家の3.9Ωより増量して5.1Ωくらいとしました

 

各部設計値での電圧です
・増幅部
 
・電源部
 

以上より、それなりにできんだろってことで早速組み立てです。

 

 

というわけでもう完成

 

 

 

 

縦ラグを大量に使いました。

メンテナンス性はとても良いのですが、レイアウトに困りましたね

本家の平ラグよりも圧倒的に面積をとるので。

 

珍しく高い部品ばかり使って見ました

RIAA素子のコンデンサですが、2700pFのマイカなんざそこらで買えるだろうと思いきや

いまやどこにも売ってないんですね。しかもあったとして高い。

結局海神無線さんで売っているサンリング・東信製の銅箔PPSが安かったので使いました(耐圧250V)

といいつつも予算をゴリゴリ削ったので、選別してないんですが。

まあ抵抗は選別してコンデンサは左右で容量合うように組み合わせたので良しとします(適当)

 

出力の負荷抵抗ですが、本家では1Mとされています

しかし当方の機材では47k~100kくらいの入力インピーダンス機材が多いため、

120kくらいが適切とみました。(合成負荷33k~55k)

ここの抵抗をもう少し大きくすると100kで受けたときにかなり低域が持ち上がるうえ、

超低域の減衰が見込めなくなるので少々小さめに感じますがこれくらいが具合良さそうです

差の出やすい低域端の交流負荷も本機だとRl=120k/Rnf+Rk=2301.1k/Z=47kより33.28k

本家だとRl=1M/Rnf+Rk=2821.1/Z=33kより31.59kとなり

元の仕様とほぼ同じ数値ですので計算上問題なさそうです

 

レイアウトは完全にミスりました。

が、配線をきっちりまとめているのでノイズは少なく、ハム音はまったくしません

アンプ側でフルボリュームでもホワイトノイズの奥にハムがうっすら鳴っている程度です

今回は手元に合ったOIコアの電源トランスを使いましたが、

配線さえ十分に工夫すればハムは根治できます。

そのほかクロストーク悪化しないように出来る限り左右では直交するような配線にしています

 

 

各部電圧を測定してみました

 

・増幅部

 

・電源部

 

かなり精度高く算出できています。

初段がやや電圧低めですが、この程度は12AX7であれば無問題であり

バイアス自体が低すぎないのでちょうど良い塩梅です

 

 

 

とりあえず今出来たばかりなので真空管のエージング中です

低雑音のSovtek12AX7LPSの新品を指したところ、

スクラッチノイズがかなりパチパチピチピチしていたので程度の良い松下のものに早速変えました

2,3日でノイズ自体は相当落ち着き、ゆったりと聞けるほどまで安定しています

本家に記載されているように松下やムラードあたりはノイズが刺激的ではなく落ち着いているような気がします

 

ちなみにSovtekの12AX7LPSが3本だとヒーター電圧がちょうど12.6Vになりました

松下だと回路図に記載しているように実測13.1V程度となります

 

 

音のほうですが、半導体のようにやたら音抜けがよかったりレスポンスがいい訳ではなく、

中低域がゆったりと出て、

木管やピアノの優しいタッチ感が艶やかで豊かに感じられるEQアンプだと感じました

抜けが悪いというわけでもなく、お気に入りのディキシーランドジャズLPは

軽快かつ定位良く再生し埋もれ易いバンジョーの音もしっかりと聞かせてくれました

 

 

今回フォノイコライザは火入れしてからノイズ調整が終わるまで1日で終わりました

最初はレイアウトも雑だったこともありノイジーで左右でノイズの音量も違う有様でしたが、

今までの経験から適切に対処して完成させることが出来ました

微小信号ラインでの配線技術はラインレベルのアンプを作る上でも非常に役立つ為、

自分には力量がないと思っていても

フォノEQのレイアウトを考えたり配線して試行錯誤すると配線技術を学べると思います

プリアンプ同様そこまでお金が掛かるわけではないので、

スキル向上の教材としても中級者からでもおすすめです

 

測定だなんだはそのうちやって改良していくつもりです。(ぶっちゃけやる気無い)

レコードプレイヤー(SL-1700)がちょっとくたびれ気味なのでYamahaのYP-511あたりがほしいなあ・・・

フォノイコ2台あるからプレイヤーも2台あっても悪くないよね?

 

 

※本機は下記のページを参考にしました

 

PHONOイコライザー・アンプ 12AX7 Version2

・ぺるけ氏の本家ページです

あらゆるケースを考慮したパターンなどを公開されており、

本機に至るまでの研究も番外編として公開されています

 

おんにょの真空管オーディオ「なんちゃってフォノイコの製作」シリーズ

・全12回に渡っての製作や測定・シミュレーションが記録されています

本家よりも多角的な視点で細かく追及され公開されているので大変参考になりました