ふと、本位田祥男教授は吉川英治氏を訴えたんだっけ?と気になりだしたので、『随筆 宮本武蔵』を読み返してみた。
どうも訴訟まではいってなくて、新聞で抗議しただけだったみたい。

ことの経緯は、本位田氏が、吉川氏の新聞小説『宮本武蔵』の中に登場する自分のご先祖の一人に見まごう人物があまりにも情けないキャラクターであった為、ご自身の名誉と家名のために「どんなに調べても、そんな人物は私の先祖にはいない」と抗議文を新聞に投稿したというもの。
帝大教授でいらっしゃった本位田氏は、学生達に、登場人物の名前をニックネームにされてしまったらしい。。。
お気の毒すぎる。。。。(´・ω・`)

それに対して吉川氏は
「あなたは小説と歴史とを混同しておられる。また、史実というものを、よほど信仰的に思いすぎておられると思う。」
と反論されています。
コチラもお気持ちはわかります。
作者のオリジナルの創作をなしに歴史小説なんてかけませんし、いちいちそれについていちゃもんを付けられていたらやってられないですし。。。。
でもそれを訴えられた御子孫に向けておっしゃるのは酷・・・な気がします(^_^;

歴史上の人物の印象を決定するのは、初めて出会った小説やドラマが多いのではないでしょうか?
よっぽどその人物に興味をもって調べない限り、それが史実であると信じてしまうことも多いものです。
本位田氏が信じていなければ、尚更、信じている世間に訴えたくなるのも人情ではないでしょうか。


実際、吉川氏の小説の影響力は大変大きく、史実には出てこない想像上のエピソードが事実と信じられて、郷土史に書かれてしまっていた、ということを、当時吉川氏の資料調べのお手伝いをされていた方が書いておられます。
(樋口清之著『うめぼし博士の 逆・日本史 武士の時代編』 「小説『宮本武蔵』が歴史を変えた話」)
だからと言って、作家さんがいちいち「これは創作です」と注を付けるのも興冷めですしあせる


本位田氏の場合は、ご先祖と思った人物が架空の人物だったわけですが、実在の人物があまりにもひどい人物として書かれていると、御子孫はどんな思いでご覧になっているのだろうと思うことがあります。

この場合、もしも、御子孫が何百年も前のご先祖の名誉毀損で訴えたら通るのでしょうか?

刑法230条には
死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。

とありますが、コレは何百年も前のご先祖様の場合は不可能に近いかもしれません(^_^;
と言うわけで、訴訟は難しそうです。

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