観終わってから3日経ち、ようやくテンションも落ち着いたので(笑) 
感想をつづってみたいと思います。

ブラック・スワン
※以下ネタバレ内容が含まれますのでご注意ください※

まず周囲ですっごく評判が良く、でも「怖いよ」と言われていたので、その覚悟で望みました。

物語が始まると同時に、常にハラハラ感。


バレリーナたちの息遣いやトゥーシューズの擦れる音が妙にリアルで生々しく、バレエの優雅さよりも大変さや厳しさが感じられました。


またカメラがナタリーポートマン演じるニナの後部から映し出されるシーンが多く、常に不安感。

と、同時に自分とニナをすぐに同化させられます。


ニナの被害妄想や幻想はさらに激しくなっていき、目を背けたくなるシーンもチラホラ出てきます。

でも、念願のスワンクィーン(主役)に選ばれ、その役のプレッシャーからそういう気持ちになっていくのも、すごく良く分かるのです。


憧れの人の期待に応えたいという気持ちも、自分以上に魅力的な存在のライバルへの不安も、必要以上に干渉してくる母親へのジレンマも。



あたしが選ばれたのに。
あたしだけが選ばれたのに。



優越感に固執すればするほど、どんどん自分自身を見失っていく。
でも、その気持ちをどうしても止めることが出来ない。


わたし自身も、わたし自身の中にある、醜くてでも存在してしまうドロドロの気持ちを、いやおうなく剥き出しにされる。
そういう心境になりながら、物語は常に、ハラハラした不安とともに進んでいくのです。


そしてクライマックスの、あの、黒鳥のシーン。


鳥肌。


もっというと自分の身体からも羽が生えてくるかと思った(笑)

それくらい、もう、既に、ニナと自分自身が同化されてしまっているのでした。


なのにそこまで同化していたのに、
一気に自分自身と剥離される瞬間が訪れます。


自分を刺したのは、自分だった。


とニナが気づく瞬間でした。

ここで、私自身と、ニナとが一気に突き放されました。


その瞬間、身体が震え、今までコップに入っていた水が満ちるように涙がドワーーッとあふれ出た。


びっくり。


映画を観てこんな風になるのは初めて。


壮大で迫力ある白鳥の湖の音楽が流れ、映画の中の演目も最終シーンを向かえ、演じる白鳥と同じように死に向かうニナ。

チュチュににじむ真っ赤な血。

でも彼女のその顔は、安堵そのもの。


「死」をもってようやく自分自身を解放できたニナにとって、それは幸福だったのかもしれません。




・・・




観終わってしばらく、震えと涙がとまらず。


その涙が

しばらくは興奮なのか、感動なのか。分かりませんでした。


でもしばらく経ってから感じたのは
きっとニナに対しての「同情」に近い気持ちだったのかもしれません。

それまでは、緊張と不安のシーンが続く中で、自分自身とニナをいやおうなく重ねあわされ。
彼女の気持ちが自分のことのように同化していたのに。


自分で自分を刺してしまったニナを観た時、

「ああ、自分とは違う。私はそこまでしない」

と感じ、一気に彼女と自分とが離れてしまったからなのかと。

そこで、彼女への哀れさが強調されて、震えと涙が出てきたんじゃないだろうかと。


今、この記事を書きながら、その時の自分自身の気持ちを整理してみました笑


もちろん、人によっても、女性男性によっても、感じかたや捉え方は違うでしょう。

好きか嫌いかとか一言では言い切れない。

でも、私は観てよかった。という感想です。


ただ1つ言えることは

私にとってこの映画は、1つの「映画」という枠を凌駕した唯一無二の作品になったことに間違いありません。