昨日紹介のあった異動してきた人。
今日一日、同じフロアで仕事をしていて、少しずつ輪郭が見えてきた。
業務自体は、まだ本格的に任せられていない。
それでも本人はやけに忙しそうにしている。
席を立つ回数が多い。
誰かに話しかける回数も多い。
ただ、仕事の確認というより「説明」が多い。
「前の部署ではこうだった」
「自分は本来こういう役割だった」
「本当はこれくらい出来る」
言葉の端々に、
“今の自分”より“過去の自分”を見てほしい感じが滲んでいた。
一方で、
細かい手順やルールを伝えると、
一瞬だけ表情が曇る。
「そこまで厳密にやる必要あります?」
「前はそこ、もっと柔軟でしたけど」
環境に適応できなかった理由が、
少しずつ言葉になって浮かび上がってくる。
周囲はまだ様子見だ。
誰も強く言わないし、期待もしすぎない。
でも、
“扱いにくさ”みたいなものは、
驚くほど早く共有されていく。
昼休み、同僚がぽつりと言った。
「仕事ができないわけじゃなさそうなんだけどね」
たぶんそれが一番厄介なタイプだ。
能力の問題ではなく、
立ち位置の問題。
自分は評価される側。
周囲はそれを理解して合わせる側。
その前提が崩れた瞬間、
摩擦が生まれる。
異動はゴールじゃない。
スタートでもない。
ただ、場所が変わっただけ。
ズレは小さいうちは音を立てない。
でも積み重なると、
必ず誰かが調整役をやることになる。
その“誰か”になりたがる人は、
この職場にはあまりいない。
さて、
このズレが修正されるのか、
広がっていくのか。
それはもう、
本人の振る舞い次第だろう。