日本での世論調査では、高市首相の訪米に対して好意的な評価が多かったようだが、国民が次のような事実を十分に理解したうえで支持したとは考えにくい。イメージだけで支持している人がほとんどだろうが、ツケを払わされるのは国民だ。
米国の“ATM化”が懸念される日本
日本が米国に約束した約80兆円規模の対米投資は「公金」で1年間の国家予算に匹敵する巨額である。日本政府は国内向けに「日本側が査定した案件にのみ融資する」と説明しているが、合意文書では米国側のみで構成される投資委員会が投資先を決定するとされており、日本側が米国の意向に沿った資金供給を求められる可能性が指摘されている。さらに、投資利益の配分が米国90%・日本10%と明記されているため、日本側は低利で借り手の思うままに資金を提供させられるATMのような立場になりかねない。
80兆円の調達源
JBICの年間融資枠は2兆円程度に過ぎない。外為特会からの拠出が想定されているが、これを円安防衛に使えなくなれば、米国をはじめとする海外投資家からさらなる円売りを招くリスクがある。不足分は政府保証債で賄う可能性が高いが、これは日本の国際的信用力を低下させる恐れがある。言ってみれば、自らがすでに借金まみれにもかかわらず、他者が自由に使う資金を提供するような構図である。
IT企業とトランプ政権の結託の理由
GAFA などの巨大テック企業による税回避に対し、欧州は国際的な最低課税ルールやデジタル課税導入を進めていた。これに対抗するため、これらの企業はトランプ政権と協調し、規制回避を図ろうとしている。
第一次トランプ政権期には法人税率が35%から21%へ引き下げられ、財政赤字は2020年には約450兆円規模にまで膨らんだ。結局のところ、法人税大幅減税による税収欠損を、関税によって補う構造が強まったと言える。その手段の一つが関税である。
2025年のG7では、最低課税率の適用において米国企業を例外扱いするという合意が成立した(ただしデジタルサービス税は対象外のため、欧州側に巻き返しの余地は残された)。これを受け、米国は欧州に対する関税を大幅に引き下げた。
国家の再分配機能の低下と日本社会への影響
企業のグローバル化によって労働の交渉力は相対的に弱まり、巨大企業による寡占化も進む中、国家による再分配能力はさらに縮小している。こうした中で、米国の産業政策・財政運営に奉仕する形で日本が貧しくなり続ける中、国民の不満は米国や政府ではなく、外国人や高齢者といった社会的弱者に向かう構造がさらに深まると著者は警告する。