理由 | RIDDLE CRITIC

理由







著者: 宮部 みゆき
タイトル: 理由

大雨洪水警報が発令されるほどの豪雨が降った六月二日、東京日比谷に屹立する高層タワー「ヴァンダール千住北ニューシティ」で殺人事件が発生します。死体発見はマンションの管理人により警察に通報され、警察は直ちに非常線を張り捜査を開始します。しかし、調べが進むうちに明らかになったのは被害者の身元不明という困惑するような事実でした。被害者はいったい誰で、マンションに住んでいたはずの本来の住人はどこへ行ったのか、そして犯人は…

数多くの人間が密集して生活しながら、住人同士の接触がほとんど存在しない高層マンション。そこは住人たちにとってプライバシーの尊重が守られる理想的な住環境のはずでした。しかし住民それぞれの個人化が確保された環境であるがゆえに起きてしまった悲劇。事件当事者の話を通して個人化が進む社会の陥穽をリアリスティックに描いた本作は、現代日本の内実を生々しく暴き出した作品と言えるでしょう。