特攻隊の体験を生々しく伝える 「自分の命を大切に」~千玄室・茶道裏千家大宗匠が語る | 国際ロータリー第2570地区 2022-23年度 ガバナー村田貴紀 ブログ

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特攻隊の体験を生々しく伝える 「自分の命を大切に」

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~千玄室・茶道裏千家大宗匠が語る

寄稿者:下村由加里(奈良西ロータリークラブ会員、第2650地区インターアクト委員)

講演をした茶道裏千家前家元 大宗匠・千玄室さん

第2650地区では、平和学習をテーマに、インターアクターが学校の授業では知ることのできない命の尊さについて学び、見て感じ、自分の心で考えるための夏期研修(3泊4日の鹿児島訪問)を予定していました。しかし、新型コロナウイルスの感染状況によりこれを中止するという苦渋の決断が下され、楽しみにしていたインターアクターたちのがっかりする姿が思い浮かばれて身を切る思いでした。ロータリアンは自分が望めば一生ロータリアンでいることができますが、インターアクターは18歳までという制限があります。高校のインターアクトクラブの場合、3年生は就職や進学が絡むため、活動は1年と2年の実質2年間。2回続けて夏期研修が中止となれば、一度も夏期研修に参加する機会がなく卒業することになります。以前にインターアクトクラブの例会を訪問した時、「どうしてインターアクトクラブに入会したか?」と質問したところ、「夏期研修ですごい経験をしたと先輩から聞き、自分も参加したくて入会した」という声が少なくありませんでした。

何としてでも二年続けての中止は避けたいという気持ちで、何ができるかを模索していたところ、当初予定されていた夏期研修の講演者であった千玄室様(茶道裏千家第15代・前家元)との調整が整い、8月3日に講演をしていただけることとなりました。事前説明会を開催したリーガロイヤルホテル京都のご厚意もあり、一日だけの夏期研修を開催する運びとなりました。

蔓延防止措置宣言下でも開催できる体制を整えるため、連日連夜、臨時の委員会会合をZOOMで開催し、役割分担を決め、問題点を話し合い、担当によっては開催当日になるまでほとんど十分な睡眠がとれない委員もいました。いろいろな問題も多く出ましたが、「すべてはインターアクターのために!」と心に想い、準備を進めました。

当初の夏期研修の参加予定者に集まってもらったほか、京都府内の方に出席をお願いし、インターアクター、顧問、第2730地区ロータリアンにもZOOMで参加してもらいました。参加者数は総勢80名以上(会場32名、ZOOM55名)、前半は千玄室様の特別講演、後半は5班に分かれて講演の感想についてディスカッションをしました。

「平和」という言葉を使わない和やかな世の中に

千玄室大宗匠の講演では、ご自身がどのように特別攻撃隊員として訓練を受け、鹿屋海軍基地に赴いたか、戦争当時の状況、実際、特攻していった仲間の想い、戦争が終わっての慰霊祭での出来事などお話しいただきました。

「平和という言葉を使わない和やかな世の中であって欲しい。平和、平和と言っている間は、平和は来ない。私たちが特攻で死んだって、平和がくるのか?」

「海軍時代仲間であれもやりたかったけど、できなかった…。みんなそれが心残りだった。いつでもディスカッションしながらみんなと知恵を分け合う。『いのち』とは何か?いのちの『い』は、いきること。『の』は生きるためにのぞみを持つこと。『ち』は家族の血。自分の命を大切にすることです」と千玄室大宗匠は語られました。

さらに、若い力をロータリーに注ぎ、ロータリーの未来を形づくってほしいとインターアクターに呼びかけました。

「みんながやさしくお茶をたて、勧める。人を見下ろすとか見下すとか差別・区別のない、みんな一緒、平等の世界。みんなが互いに平等の中に楽しく感謝しながら生きていくという姿を作って行かなくてはならない。その未来を持っているのが、インターアクトです」

そして最後に次のように力強く締めくくりました。「今日をもって、インターアクトの皆さんに命の灯(ともしび)をつけて欲しい。あなた方一人一人が聖火ランナーだ!オリンピックじゃないけれど、奉仕のための聖火ランナーになって、未来を築き上げてほしい」

授業では得られない貴重な学び

参加したインターアクターからは、以下のような感想が寄せられました:

インターアクターが折った平和祈念の千羽鶴を後日奉納した地区インターアクト委員の方々

「教科書や映画などでは述べられていなかったことも学ぶことができ、とても貴重な経験ができました。また、平和に対する考え方が広がりました。日本は完全に平和とは言えず、実際、貧困やLGBTQなどの問題は未だ日本で解決されていません。今後、平和に対する自分の考えを持ち、それを信念として奉仕活動に励んでいきたいと思います」

「若く未来があったはずの兵たちに特攻が実質強制され、死が怖くてもそれを言ってはいけなかった当時の悲痛な状況を聞いて、今私たちが戦争の渦中に投げ込まれることなく暮らしていることの幸せさを感じました。今生きている穏やかな日常も、これから生まれてくる人たちが生きる日常も、なくさないように守っていきたいです」

講演とディスカッションの後には、当初に見学予定だった鹿屋航空基地資料館からLIVE中継が行われ、千玄室様の写真やその当時の携帯品、艦上0式戦闘機をはじめ多くの展示品が映し出されました。 

今回の夏期研修にご協力いただいた国際ロータリー第2730地区の皆さまに感謝するとともに、これからこのご縁を大切に育んでいきたいと思います。

 

【寄稿者プロフィール】
下村 由加里(しもむら ゆかり)
国際ロータリー第2650地区 
奈良西ロータリークラブ会員(会員歴14年) 
2011年~2019年地区RYLA委員
2019年~2022年地区インターアクト委員
株式会社ハンナ・GLOW株式会社(職業分類:貨物運送業)代表取締役社長
職業奉仕を通じて社員の心身の健康に取り組んでいる