私が生まれて初めて、人の死を知ったのは祖父の時であった。


まだ10歳にもなっていなかった私だが、生きる事、命が終わってしまうという事を子供なりに色々と考えさせられた。そして沢山泣いた。


そんな経験の後、兄の事故があって、私は家族がこの世の中から居なくなるという事が最たる恐怖になった。高校生の頃は、親に何かあったらどうしよう。という恐怖で、親を看取るくらいなら自分が先に逝きたいとすら思っていた。


そんな私が、夫を亡くした。ある日突然倒れてそのまま…。


深い深い蟻地獄に突き落とされたよう。

もがいても、もがいてもどうにもならない。

這い上がって来たと思えば、突然また深い蟻地獄に落ちていく。

当たり前のように、明日は来ると思っていたあの頃。

当たり前のように、一緒に歳を重ねると思っていた。


夫を亡くして、未来や将来や、老後、子供達の育て方、色々なものが変わり果てた。


病院の先生が、生存は難しいと言った時も「医師は保険をかけて最悪な事をまず言うから…」とか、若いし、ずっとスポーツもやっていたからきっと意識が戻るはず。そう信じていた私の思いは木っ端微塵に消えた。


何年かかってもリハビリして、老後は「あの時は大変だったよね」と2人で笑っているはず。

そんな願いも虚しく、夫は帰らぬ人となった。


今も、日本のどこかで、海外のどこかで、深い深い蟻地獄に落ちてもがいている人がいるのだ。


死別という名の蟻地獄。だ。




これすごい!!