読売新聞ヨミドクターの8月2日掲載記事より抜粋

 今年3月、予想以上のがんの広がりがわかり、再手術を受けた。


 2週間の入院を終えて帰宅すると、部屋はきれいに掃除してあり、食器もすべて洗ってあった。「前日に慌てて片づけたみたい。母子家庭なので、私が倒れたら助けてくれる大人はいません。『私がいない間、子ども3人が協力して家事をこなすことで、自立するきっかけにしてほしい』との私の思いが伝わったのかもしれません」


 2度の手術でがんは取り切った。現在は、経過観察を続けている。


 子宮(けい)がんは、性体験のある女性なら、誰もがかかる可能性があり、ワクチンでの予防や検診による早期発見が大切だと知った。出産後、全く検診を受けなかったことを悔やんだ。そんな自身の体験、思いを伝えたいと考えている。


 仕事も再開。8月には、朗読劇「この子たちの夏 1945・ヒロシマ ナガサキ」の公演が控える。東京、佐賀など全国4か所をまわる。今年1月、がんの告知を受けた直後に、出演依頼を受けた。母子の絆や命の尊さがテーマ。「やります」と即答した。


 「がんになり、命と真剣に向き合ったからこそ、表現できることがある」


 これからも様々な役を演じ、女優として、母として強く生きていく。(文・中島久美子、写真・藤原健)