今年3月26日、患者から直接、副作用の報告ができる新しい制度がスタートした。薬と医療機器の審査や安全対策を担う独立行政法人「医薬品医療機器総合機構(PMDA)」が運用するもので、患者や家族が、インターネットで報告できる。試行段階だが、1か月で64件の報告が集まった。
PMDAの医薬品医療機器情報提供ホームページで、「一般の皆様向け」欄の「患者副作用報告」に入力する。
副作用の症状と経過、使っているすべての医薬品名、過去の副作用履歴といった症状に関する情報のほか、氏名、年齢、住所、電話番号、メールアドレスなどの個人情報が必要になる。かかっている医療機関の連絡先や担当医名を知らせることもできる。
この制度は、ウイルスに汚染された血液製剤でC型肝炎感染が相次いだ薬害肝炎問題を受け、発足した「薬害肝炎事件の検証委員会」の提言がきっかけで創設された。製薬会社や医療機関による報告だけではすくい上げられない患者の声を集めることが、安全対策に有効との考えからだ。
委員を務めた薬害オンブズパースン会議事務局長で弁護士の水口真寿美さんは「良い制度にするため、多くの報告が集まるよう広報をしっかり行い、集まったデータを生かす工夫をすることが大事」と指摘する。
患者による副作用報告制度は、欧米を中心に約50か国で導入されている。
先進的に取り組むイギリスでは2002年、抗うつ薬SSRIの安全性をテーマにしたテレビ番組に対し、電子メールで寄せられた1300件以上の反響が、自殺につながる重大な副作用の発掘に結びつき、患者による直接報告の意義が注目されたという。
日本では導入されたばかりで、まだ多くの課題を抱えている。集まった情報の評価や分析方法が確立できていないこと、それを行う人員が不足していることなどだ。
鈴鹿医療科学大(三重県鈴鹿市)教授の山本美智子さんは「患者は、『患者という専門家』の立場で自らの情報を発信する役割を担っている。医療関係者による副作用報告が伸び悩んでいる日本では、医薬品の安全性を監視するためにも患者からの報告がますます重要になる。課題も多いが、患者の声を反映する手段として、定着させることが必要」としている。
PMDAの医薬品医療機器情報提供ホームページ
(http://www.info.pmda.go.jp/)