朝日新聞アピタルニユースの4月17日記事より抜粋
バージャー病は、手足に血液を届ける中くらいの太さの血管が何らかの原因で炎症を起こし、血栓ができたり壁が厚くなったりして塞がり、血液の流れが悪くなる。国が指定する難病で、閉塞(へいそく)性血栓血管炎ともいう。国内の患者数は7千人余り。9割が男性で主に20~40代で発症する。大半が喫煙者だ。
手足の冷たさや足の裏のしびれなどが初期の症状で、悪化すると潰瘍(かいよう)や壊死(えし)が起こり、激しく痛む。血流が良くならないと、手足や指を切断しなければならないこともある。
血流の改善には、血管拡張薬や抗血小板薬を飲む薬物療法、血管が収縮しないよう手足につながる交感神経を切る手術、新たな血行路を作るバイパス手術などがある。これらが行えない場合、骨髄や血液から特定の細胞を抽出し、患部に注射して新しい血管を育てる先進医療も近年、注目されている。
ただ、治療の基本はあくまで「禁煙」だ。東京医科歯科大の井上芳徳講師(血管外科)は「軽症なら、禁煙と血行をよくする適度な運動、保温と手足を清潔に保つケアで、快方に向かう人が多い」と話す。
欧米の報告では、禁煙した患者の9割以上は、手足や指を切断せずにすんだ。一方、喫煙を続けた患者の4割が何らかの切断を経験。日本の調査でも、喫煙を続けた人の19%が、手足の切断に至っていた。
喫煙は、バージャー病を悪化させるだけでなく、血管にさまざまな悪影響を及ぼす。
たばこの煙を吸うと、血管の内側表面にある細胞が傷つき、血栓や動脈硬化が起きやすい。煙に含まれる一酸化炭素が血液中に入ると、酸素を運ぶヘモグロビンとくっつき、血液が酸素不足になる。ニコチンには一時的に血管を収縮させる作用もあり、血圧や心拍数が上がる。
日本循環器学会などの合同研究班の禁煙指針によると、喫煙は脳卒中や、心筋梗塞(こうそく)など虚血性心疾患、大動脈瘤(りゅう)、末梢(まっしょう)血管の病気などのリスクをいずれも高める。
研究班長の室原豊明・名古屋大教授(循環器内科)は「副流煙はフィルターを通さずに煙を直接吸うことになり、もっと悪い。家族ぐるみの禁煙が大切」と話す。(鈴木彩子)