朝日新聞アピタルニユースの4月14日記事より抜粋

 左足の指の傷がなかなか治らず、血管が塞がるバージャー病が疑われた大阪府の白国和明さん(26)は2007年4月、詳しい検査を受けるため、東京大病院血管外科に入院した。


 この時は、「ちょっと治療をすれば良くなるのかな」と思っていた。両足の血管造影などの検査を受け、主治医の重松邦広(しげまつ・くにひろ)講師(50)から説明を聞いた。


 太ももから足の先へ血液を送る主な動脈のうち、ひざから下の部分がほとんど塞がって、流れが悪くなっていた。左足だけでなく、右足も同様だった。動脈硬化とは違い、血管が炎症を起こし、血栓ができたり血管の壁が厚くなったりして、ところどころが塞がっているバージャー病特有の状態だった。


 病状は、思った以上に深刻だった。気持ちがズシッと重たくなった。「なんで俺なん?」


 重松さんは「治療の原則は禁煙です」と、説明を続けた。


 治療法には、血液の別の通り道をつくるバイパス手術や、血管を収縮させる交感神経の一部を切り、血管が縮まないようにする手術などがある。でも、バイパスをしても何割かの人は、つないだ血管が詰まる。神経を切る方法は効かない人もいる。


 禁煙ができれば、手術に至らずに状態がよくなる可能性も高い。「たばこ、やめなあかんな」。そう思った。


 幸い、足先の皮膚に、傷を治すために必要な血液はなんとか流れていた。まずは禁煙を徹底し、血液の流れを良くする薬を飲みながら様子を見ることになった。指の傷の手当てにはこれまで通り、皮膚の再生を促すスプレー薬を使った。


 5月初旬に退院するころには、化膿(かのう)していた傷口が皮膚で覆われた。その後は1カ月ごとに通院。指の傷は、少しずつ快方に向かっていった。


 だが、たばこはすぐにはやめられなかった。


 ふだん、家族や同僚の前では我慢できたが、酒を飲むと無性に吸いたくなる。我慢できない時は1本だけ、公園などでこっそり吸った。1箱のうち1本だけ吸って残りは全部捨てる。その繰り返しだった。


 7月には左足の傷も治り、友達と旅行した。ところが1カ月後、今度は右足が痛み始めた。