東京都の男性(78)は2012年1月末、朝起きると体がだるく、38・6度の高熱があった。浅草寺病院(東京都台東区)を受診すると、インフルエンザと診断された。
抗インフルエンザ薬を処方されて帰宅し、2階の寝室で体を横たえたところで意識がもうろうとしてきた。外出先から妻(77)が戻ると、男性は苦しそうにもがいていた。
救急車で再び同病院へ。血液検査で、細菌に感染した際の炎症反応を示す検査値(CRP)が高く、白血球も基準値を大幅に上回っていた。呼吸器内科医の中山智子さんは、インフルエンザウイルスが原因ではなく、細菌に感染したことによる肺炎と診断した。
男性は、血中の二酸化炭素濃度が高く呼吸が苦しい状態だったため、直ちに人工呼吸器を装着した。抗インフルエンザ薬と抗菌薬の点滴を受けた。血圧が低下し、多臓器不全につながる恐れもあった。
インフルエンザは、A香港型やB型、2009年に大流行したインフルエンザ(H1N1)2009などのタイプがある。ウイルスが気道の表面の細胞を傷つけると、別の細菌による二次的な感染を引き起こすおそれがある。今季流行したA香港型は、高齢者に肺炎を起こしやすい。
男性は以前、肺を覆う膜に炎症を起こしたことがあり、膜の一部が固くなっていた。肺の伸縮機能が低下し、せきをしたり、
一時は意識不明の重体だった男性は徐々に回復し、入院2日後には人工呼吸器が取り外された。その後、院内で少しずつ歩く訓練をして2月末に退院した。
10日間は自宅で安静にし、息苦しさがある時は酸素吸入器を使うこともあるが、今では自宅近くを散歩することもでき、少しずつ体力が戻りつつある。
ワクチンを接種していれば、インフルエンザに感染しても、発症や二次的な感染による症状を抑える効果が期待できる。男性は「今年に限って、大丈夫と思いこんでワクチンを打っていなかった」と悔やむ。
肺炎予防には、主な原因とされる肺炎球菌ワクチンも重要だ。接種費用の負担に、補助制度を設けている自治体もある。
中山さんは「抵抗力の低下している高齢者や、呼吸器の持病を抱えている人には、ワクチンを接種してほしい」と呼びかける。