朝日新聞アピタルニユースの11月28日記事より抜粋

 C型肝炎による肝がんを発症した静岡県島田市の杉村功さん(75)は、エタノール注入療法を受けたが、2003年8月にがんが再発した。主治医の伊東クリニック院長、伊東和樹さん(61)は、「再発の可能性はあるが、最も効果的なのは肝臓の切除手術」と、手術を勧めた。


 2カ月後、静岡県立総合病院で手術を受けた。執刀した大場範行さん(53)から「がんは取りきれた」といわれ、気持ちが楽になった。退院後、伊東さんは「肝がんは、取っても別の所から出てくるもぐらたたきだ」と、あえて厳しいことを言った。治療に負けない気持ちを持って欲しかった。


 再発への不安を打ち消そうと、杉村さんは毎月の定期検査やクリニックで開かれる勉強会に欠かさず通った。その中でインターフェロン治療の話も聞き、「自分も受けたい」と思うようになった。がんがなくなっても、ウイルスがいたままでは、不安だった。


 インターフェロンにはさまざまな副作用があり、高齢者ほど出やすいという。自分の年齢で治療を受けるのは難しいことも知った。それでも「条件があえば受けたい」と伝えた。伊東さんは「治療に負けない意気込みが大事」と励ました。体力をつけようと、毎朝約1時間半歩いて副作用に備えた。


 手術から2年後、週1回のペグインターフェロン治療が始まった。半年後にはリバビリンとの併用療法に。3週間ほど微熱が出て、肺炎のため一時休薬もしたが、治療開始から約2年後にはウイルスも陰性化した。


 だがその翌月に、がんの再発がわかった。「やっぱりもぐらたたきか」と落ち込んだが、がんに電極を刺してラジオ波をあてて焼く方法もあると聞いた。2カ月後に県立総合病院で治療を受け、再びがんは消えた。


 1年後には、ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法を再開。昨年4月に1年半の治療が終わり、半年後の検査でもウイルスは陰性だった。伊東さんと「完全駆除」の記念撮影をし、祝った。


 肝切除手術を受けたとき、大場さんからは「5年生存率は60%」と言われていた。「あれからもう8年。人生のロスタイムが長くなったと思っています」