朝日新聞アピタルニユースの11月8日記事より抜粋
結核は過去の病気と思われがちだが、日本では、今も年間2万3千人余りが新たに結核を発病する。結核が死因の1位だった戦後すぐに比べれば、死者数は60分の1に減った。だが、昨年も2千人余りが亡くなった。
「結核は、目立たないけれど静かにはやっている」と公益財団法人結核予防会の石川信克・結核研究所長は話す。新規発病者の半数は70歳以上だが、20~30代の若い世代も計15%いる。
結核菌が体内に定着した状態が「感染」だが、感染しているだけでは他人にうつらない。
感染後、免疫力の低下などで結核菌が増え始めるのが「発病」で、せきや熱などの症状が現れる。発病者のせきやたんを通じてうつる。
発病するのは感染者の1割程度。潜伏期間は人それぞれで、数十年たってから発病する人もいる。食事や睡眠、適度な運動など、健康的な生活を心がけることが予防につながる。
結核は、きちんと治療すれば治せるが、放置すれば命を落とす。自身の健康を守り、周囲への感染を防ぐためにも、早期発見・治療が大切だ。ただ、結核の初期症状はせきや微熱、倦怠(けんたい)感など、風邪と区別がつきにくい。受診が遅れたり、医師の診断が遅れたりする例も目立つ。
結核研究所疫学情報センターのまとめでは、働き盛りの30~59歳の肺結核患者で、発病から診断までに3カ月以上かかった人が3割弱いた。医療機関を受診してから1カ月以上、診断がつかない人も1割強いた。
診療指針の作成委員長、山岸文雄・千葉東病院長は「診断の第一歩はX線検査。2週間以上せきが続くなど体に異変を感じたら、医師に『結核は大丈夫ですか』と尋ねてみて」と話す。
治療の基本は、6~9カ月間、抗結核薬を飲むことだ。一般的に、リファンピシンやイソニアジドなど4種類の薬を2カ月間、その後2種類に減らして4~7カ月間飲む。
薬は、必ず毎日飲まなければいけない。中途半端に飲むと、結核菌が再び増殖を始めたり、薬剤耐性菌が生まれたりする危険がある。退院後は、患者が薬の空袋を定期的に保健所に送るなど、飲み忘れていないかを確認する「地域DOTS(ドッツ)」という取り組みもある。(鈴木彩子)