朝日新聞アピタルニユースの9月16日記事より抜粋


「副作用の管理に自信がない」。関節リウマチを疑い、東京都内の女性(48)が受診した都内の整形外科医院で、医師はそう話した。


 関節の破壊を止めるメトトレキサートが効かなかった場合、「生物学的製剤」と呼ばれる新しい薬が使われる。自らの専門や治療経験などから、肺に重い障害が出た場合の対処が心配だという。医師は女性に専門医に診てもらうかどうかを尋ねた。


 女性が決心するまで、時間はかからなかった。


 関節リウマチをインターネットで調べていて「window of opportunity(治療機会の窓)」という言葉を知っていたからだ。


 この病気は、発症から2年間に小さな虫食い状の「骨びらん」を含む関節の破壊が進むことが多い。できるだけ早く診断して薬で治療し、進行を食い止めようという意味だった。


 「ちゃんと診断してもらって、早く投薬治療を受けたい」と、女性は思った。


 指の関節の痛みに気付いて3カ月後の2008年6月、東京都文京区の東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科を訪ねた。


 エックス線写真では、骨破壊の始まりの「骨びらん」はなかった。ただ、指の関節の腫れが4カ所、痛みは6カ所と関節炎があり、血液検査ではリウマトイド因子が基準値の7倍以上だった。主治医の宮坂信之(みやさか・のぶゆき)教授(63)から「関節リウマチですね」と言われた。


 前年に公的医療保険の対象になった「抗CCP抗体」という血液検査も受けた。早期診断のほか、将来、重症化する危険を見積もって治療方針を立てるのに役立つ大切な指標だ。


 1週間後に出た検査結果は基準値の18倍以上。正式に関節リウマチと診断された。数値の高さに、女性は「症状が進んだらどうしよう」と不安になった。


 炎症の強さを示す値は低かったが、抗CCP抗体の値が高かったため、宮坂医師は「従来の抗リウマチ薬では進行する可能性が高い。早く積極的な治療をした方がいい」と、メトトレキサートを勧めた。


 「治療機会の窓」という言葉が女性の頭に浮かんだ。宮坂医師の助言に納得し、薬を飲み始めた。