4月6日のプロリーグの開幕に、第12期太閤位の中田一幸プロが挨拶に来た。そこで個人的にではあるが、決定戦の感想を聞かせてもらうためにインタビューをお願いしてみた。




 中田 「ギャラは高くつきますよ」




 と言われたので、コンビニで昼食のサンドイッチと缶コーヒーを進呈。




 近野 「私のポケットマネーだけに高くついたね。」




 と互いに笑みを浮かべる。ここからは、私と中田の会話形式でお送りする。




 近野 「第12期太閤位決定戦優勝、ほんまにおめでとう。」


 中田 「ありがとうございます。六度目の挑戦にしてやっと届いたという感じです。」

 近野 「それでは、まずは決定戦の内容から質問させて頂きますね。」




 Q1、初日の戦いぶりについて。




 近野 「私は初日は仕事で見にこれなかったからわからないんだけど、どういう展開だったの?」

 中田 「一回戦目は調子よくトップを取らせてもらったんですよ。でも、その後は花岡さんに押される展開が続き、痛恨だったのが六回戦でしたね。自身も打ち込みとわかりながら切った牌で、その花岡さんに二回とも親満を振り込んでしまい、あの結果を迎えてしまいました。」

 近野 「じゃあ、中田くんは10回戦目まで、8回戦ものあいだトップが取れずに我慢の局が続いたんだね。それでも、トップ率2割5分での優勝は理想的だね。」




 Q2、二日目に対する意気込みについて。




 近野 「正直言ってポイント差はかなりあったよね。それを迎えての選手としての心理的な動きなどがあれば、教えて欲しいんだけど。」

 中田 「ポイント差は理解していましたが、あまり意識はしていませんでした。少しでも首位の花岡プロとの差をつめていくことだけを考えていました。」












 Q3、逆転優勝の理由となった局面や心理などあれば。




 中田 「局面は特に印象はありません。常に毎局、首位との差をつめていく事だけを一心に考えた結果の積み重ねが、今回の優勝に繋がったと感じています。」




 Q4、二日間で一番のミスがあるとすれば、それはどこですか?




 中田「やはり、花岡さんに対しての、六回戦の二度の親満の振り込みですね。あれで、花岡さんが優勝していたら、責任は僕にあると悔いが残りましたから。」












 Q5、その他、決定戦で印象に残っている局があれば。




 近野 「では、こちらから質問していくよ。まず、12224455667は?」

 中田 「7回戦のホンイツの7切りは今思い返しても駄目ですね。やはり、あれは1ソウ切りが自分らしい選択だったと反省しています。」

 近野 「そういう重圧がかかるから、やってしまうミスもあるよね。でも、以前だったらペースが崩れてしまっていたけど、今回は全くそういうことがなくて素晴らしかったよ。」




 近野 「少し飛ぶけど、11回戦の開幕に米川プロに対する12000の打ち込んだ時はどんな心境だった?」

 中田 「正直きつかったですけど、打ち込んだのが米川さんだった事に希望が持てました。あれが花岡さんだったら、もう逆転の可能性が絶たれていましたから。」

 近野 「なるほど、だから最後まで勝負に冷静だったんだね。」




 近野 「7回戦のチンイツの仕掛けについての意識や理由を聞きたいね。四四1122446678発。7が二枚切れ、3が三枚目で花岡プロから仕掛けたんだけど。」

 中田 「牌姿だけみたら、この鳴きは僕はないですね。ただ、あの時は上家の花岡さんが3ソウを降ろした時点で、僕の役目は押さえつけにあると感じていました。だから、あがりに向かうよりそちらの気持ちが強く働いた結果が、いい方向に向かいましたね。」




 近野 「あとは、11回戦で花岡プロの動きを見て、序盤なのに決め打ちタンヤオの500オールを上がったりとかもあったよね?」

 中田 「はい、暫定首位ということもありますが、それだけ花岡プロはマークしないといけない気持ちは強かったですね。三色の変化を見切って三面張で曲げた時も、やはりきつい牌を打ってきた花岡さんを押さえつける意味を考えましたから。」


 近野 「そう言われると、日記で書いた内容も全く見方が変わるから、麻雀って面白いよね。最後までドラマチックな展開で、とても感動的な決定戦をありがとうございました。」












 Q6、優勝を決めた時の気持ちは。




 中田 「ほんまに疲れた。」の一言ですね。

 近野 「それ、過去に石村プロにインタビューした時も、まんま同じことを言ってたよ(笑)




 Q7、太閤位としてのこれからの目標。




 中田 「まずは目の前の事をひとつずつクリアしていく事ですね。そして、一番の目標は、次期太閤位の連覇です。」




 Q8、プロを辞めようと思っていた、て本当ですか?




 中田 「本当です。色々な意味で継続が厳しくなってきましたから。ただし、その為には自分に条件をつけています。その条件とは、太閤位決定戦に残れなかったら、プロを辞めるということ。だから、今期に、もし決勝卓に残っていなければ、プロを辞める覚悟を決めていました。」

 近野 「その決意は、まるで相撲の横綱と同じ心境だね。私は中田プロの麻雀が好きだし、できる限りプロを続けて欲しいから、これからも応援し続けるよ。」

 中田 「今期太閤位をとったので、後2年は必ずプロを続けますよ。」




 Q9、最後にこれからの関西の若手に向けてメッセージを。




 中田 「言いたい事はいっぱいあるから、ここでは全ては言えませんが、一番言いたい事は関西の若手はプロになった理由が無さすぎるという点ですね。」

 近野 「そうだね。自発性がないのはプロとしては一番だめだね。」

 中田 「一人一人がそれぞれプロになった理由を明確にして、その目標に向かってこれからのプロ活動に取り組んで欲しいと思いますよ。」


 近野「インタビューご協力ありがとうございました。中田一幸プロに更なる飛躍を応援していますよ。」




 インタビューが終わって周りを見渡したとき、こうやって麻雀を振り返る機会や接点が、関西はあまりに乏しい気持ちになった。もちろん、プロだから自動的に与えられるような甘い世界はどこにもない。全ては自己の努力からスタートし、成功するも失敗するも自分次第。とはいえ、それならば何も組織に組することはない。




 私のプロとしての目標は、麻雀をサロンというものに変えていく努力や革新を続けて生きたいという思いである。そのためには、少なくとも私ひとりの力では無理であることを承知している。他の選手たちも、もっとその事を理解して人間や情報の海に目いっぱい飛び込んできてほしいと思う。




 中田の明確な目標が太閤位の連覇であり、責任を果たせなかった時の引退なら、私も明確な目標をもって決意しなくてはならない。今回はそう考えさせてもらえた、太閤位の観戦日記となった。














 これまで大変長い文章にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。