話題の映画「国宝」を封切り後すぐに観に行った。

一回だけでは足りず数日後にもう一回行った。

以下、多少のネタバレを含みますので新鮮な気持ちで観たい方はご注意を。



任侠の家の出身ながら歌舞伎で人間国宝にまでなった「喜久雄」を演じる吉沢亮は麗しく、歌舞伎の家に生まれて御曹司として育った「俊ぼん」を演じる横浜流星のイケメンぶりがすごい。

一年半もお稽古をつんだという歌舞伎のシーンはとても素敵だった。


初見ですぐ思ったのが、レスリーチャンの映画「さらば我が愛 覇王別姫」に似ているなということ。あちらも子役が芸の研鑽するシーンから始まり、レスリーチャンが麗しい女形を演じる。

2つの映画の大きな違いは、レスリーチャンの演じる蝶衣は舞台を降りていても心は女性で、相手役の男性的な魅力たっぷりの俳優に恋心を抱いているところ。

国宝の方は、吉沢亮演じる喜久雄も横浜流星演じる俊ぼんもどちらも女形なのだが、普段は女性を抱くし子どもも作る男である。


主人公たる喜久雄よりも、俊ぼんのいい男ぶりがよかった。

喜久雄は自分の芸だけに没頭しているように見えるけど、俊ぼんは違う。

2人で舞っている時はいつも笑みを含んでいて、「喜久雄と一緒に演れて嬉しい」と言っているかのよう。

自分が当然やるべき父親の代役を喜久雄がやることに決まった時も心底は怒れない。本番前にお前の血がうらやましい、お前の血が欲しい(実際のセリフは「お前の血をゴクゴク飲みたい」)と言われても怒りもせずに化粧をしてやり、涙をポンポンとぬぐってやる。

なんて情のあるええ男やとグッときた。


まあ、こういうところがあるから渡辺謙演じる父親の花井半次郎は、すぐに代役を息子にと思えなかったのだろう。

本番まで数日しかないから充分に稽古する時間がなく、息子には失敗してほしくないし(喜久雄は失敗しても構わない)満を持して舞台に上がってほしい。

歌舞伎の血筋ではない喜久雄に負けてなるものかと奮起してほしい。

代役を与えた時点ではもともと喜久雄に半次郎の名前をやるつもりはなかっただろうと思う。


俊ぼんはその優しさゆえに至上の芸をつかみ取る前に斃れた、と私はみた。


初回に見終わってすぐ、映画館でママ友さんにばったり会った。

「(横浜流星か吉沢亮)どっち推しなの?」と強めに聞かれて若干タジタジとなったけど、

私はどちらが推しというわけではなくただこの映画が面白そうと思って観にきたと答えた。


2回観終わった今は、断然横浜流星推しになった。


放送中の大河ドラマ「べらぼう」の横浜流星は、やたらと着物の着こなしが様になっていてちょいと腰掛けても歩いてても、蕎麦を食べていてもとても格好良い。

歌舞伎の稽古をして映画を撮った後にこの蔦屋重三郎を演じているのだからそれもそのはずだとよく分かった。