私の祖母の話だ。

ある時、空襲警報が鳴って、
目の前にあるものをつかんで走った。
走って、走って、走って、
とにかく走って逃げた。

走って、走って、やっと
空襲が収まって、
火を逃れたところに腰を下ろした。

みんなで生きてることに喜びあったって。
それから
手に持ったものを笑い合ったって。
「私、こんなの持ってきちゃったよー。」
祖母はやかんを持って走ってたって。
みんなもいろんなもの持ってたって。
それをみんなで笑い合ったって。

桃を持ってた人がいたって。
「その時食べた桃が美味しかったー!!!」
とびきりの笑顔で話してくれた祖母。

祖母は2年前に亡くなってしまったけど、
桃を食べるたびに
この話を思い出す。

山梨に住んでた祖母は
果物が大好きだった。
山梨でも空襲があったんだね。

戦火を逃れて、
生きてることに喜びあって
汗だくで桃を頬張る祖母たち。

祖母と祖母の姉は
夫が船に乗って戦っていた。
祖父は帰ってきた。
祖母の姉の夫(私にとっては大伯父)はそのまま帰ってこなかったって。

戦争のことを話してくれる
祖母はもういない。

祖母から見て
今の私たちはどんなかな。

すごい昔の話なわけじゃないことに気づいた。
私たちはまだ直接話が聞ける世代なんだ。
直接話が聞ける世代って私たちまでだよね。
なんとかしないといけない。

ricco