ロワールのシュール・リ Jazz祭
ナントは、ブルターニュから、ロワール河沿いにワインの地を巡りながらパリへのルートの最初の経由地となる町で、フレッシュで喉越しのいいミュスカデの中心地としても知られている。
自分で運転してワイン巡りする時は、出来るだけ大きな都市を避けて目的地を効率よくめぐる計画を立てるのだけれど、いつも結局は寄り道ばかりになってしまい、予定通りに進まない。でもそれが思わぬ旅の拾い物的な側面あるから面白い。
ブルターニュと縁のある(と思っている)私にとって、そのブルターニュのかつての首都がナントであったり、今でもフランスの重要な港を持つナントがアフリカとの交易(と言っても奴隷の取引)で栄えたとか、代々のフランス国王の居城だったこと、そして歴史でも習ったナントの勅令等、なかなかこの町にまつわる歴史物語には、興味をそそられる。
そんなことが頭をよぎったのだろうか、乗り入れる筈ではなかったナントの町にナントなく、フラリと入り込んでしまった。
町をぶらぶらしていると、ナントの東方の小さな町ル・パレでジャズ祭が行われるというポスターを発見。日程もドンピシャだ。
ル・パレは近くのヴァレ村と共に、ミュスカデの中心といえるような町だから、これは行くしかないと、ナント見物そこそこに、気がつけばもう車を飛ばしていた。
このジャズ祭は今年で15回目となる音楽祭で、毎年8月後半のそろそろヴァカンスも終わりに近ずこうという時期に屋外と屋内で昼夜通して開催される。
行った時は丁度初日で、ジャズのトリオ、クアルテットが次から次と好演を繰り広げられていた。プロだけではなく、アマチュアらしき面々もいるが、聞き手も乗りにのっているから多少のミストーンなど気にもならない。
大きな木のある緑に囲まれたちょっとした演奏会場では、フリードリンクとしてミュスカデ・セーブル・エ・メーヌ・シュール・リが惜しげもなく振舞われ、その爽やかな喉越しとフレッシュさがジャズのビートと、えもいえないハーモニーを奏でるのだった。
そう、ここはミュスカデの本拠地であり、シュール・リというこの地域独特の、澱を残したまま樽やタンクで熟成させる製法の本場だから、なるほどジャズ祭にその名が付いているのも頷ける。
それにしても、ワイン好き、ジャズ好きを引き付けるネーミングではある。
スタンダード・ジャズ特集の後、アントニオ・カルロス・ジョビンを思わせるボッサノヴァ
のギター演奏に、しばし酔いしれた。
ワインとジャズ、ワインとクラシック音楽をテーマに各国、各地で大掛かりなイベントを見たり聞いた経験のある私としては、こういう場に来る度に、日本でのワインや酒と音楽やアートとのコラボは、個々の蔵元では行っているけれど、地域全体でも是非このような試みをやって貰いたいと思うのだった。










