部屋には、妙な緊張感があった。
ひろとはダウンも脱がず、
テレビの前の椅子に座っている。
私もいつもの位置に座った。
そうすると、テーブルを挟んで、ちょうど90度の位置になる。
でも取り立てて会話する訳でもなく、
テレビの音だけが、響いていた。
結局、ひろとは借りたDVDを見終わるとすぐ、
仕事があるから帰ると言い出した。
沈黙の中、
変な緊張感にぐったりしていた私は、
「そっか…。頑張ってね」
とあっさり送りだした。
玄関まで見送る。
「じゃあね」
とドアが閉まる瞬間…。
ひろとに近寄って、キスした。
触れるだけのキス…。
その一秒後、
ひろとは私の大好きなあの笑顔になった。
ひろとが帰った後、
一人リビングに戻りソファーに横になった。
「はぁ……。」
ため息をついた。
“何だろうあの緊張感は?”
同じ部屋にいるのに、誰も寄せ付けない、奇妙な緊張感・・・。
やっぱり、以前に聞いたトラウマのせいなのだろうか…。
この先、ずっとこれが続いていくのかな…・・・?
ひろとのあの笑顔が見られたのはうれしかったけど、
なんだか、
やり場のない、
モヤモヤした、
訳の解らない気持ちになった。