毎年、
クリスマスが近くなると大通りは一面、イルミネーションが施される。
まるで、光の花が咲いたみたいだ。
この街のイルミネーションは有名だった。
地元の人以外も他県から、大勢の人がこの光の花を見に集まるのだ。
だからクリスマスの前後は、
街は人で溢れかえる…。
ひろとが睡眠時間を削って働いているのを知っていて、
私は
「イルミネーションが見てみたい」
と無茶を言った。
「わかった、時間作るよ。」
彼は無理して
時間を作ってくれた。
約束は8時。
8時30分過ぎても、ひろとは来なかった。
いつもなら、30分遅刻ぐらいで来るのに…。
メールは返ってこない。
電話も繋がらない。
何回もコールした。
やっぱり出ない…。
どうしよう…。
事故でもあったのかと、急に不安になった。
私はまだひろとの
家も知らない…。
友達も知らない…。
何も知らない自分が悲しくなった。
「あ…」
ラストイベントの時、アドレス交換した、祐希奈ちゃんの事を思い出していた。
すぐさま電話する。
「理緒さん、久しぶり!元気~?」
「元気だよ!
急にゴメン…、
ひろと、
電話繋がんないんないんだけど、
そういう事って、
よくある?」
聞かないといけない自分が情けなかった…。
「ひろちゃん、きっちりしてるから…。
おかしいですよね…?
私、ひろちゃんの友達に連絡してみますね!」
「ありがとう。お願い!」
暫くして、ひろとから連絡があった。
「理緒さん、ごめんなさい!すぐ行きます!」
ひろとは疲れすぎて、ソファーで爆睡してたらしい…。
すぐさま祐希奈ちゃんにありがとうを言い電話を切った…。
“何でもなくて良かった…。”
そう思うと同時に、
何も知らない自分に対する憤りが込み上げてきた。
しばらくして、いつものように慌てながらひろとが現れた。
でも結局、
時間がなくて
イルミネーションを見る事は出来なかった。
「また来年もあるじゃん…。」
ひろとは言った。
その約束が守られる事はなかったけど。