未履修のあおりとアイスオーレ-i.jpg




空模様を知る勇気はあるかい?




とは言っても、賢明なあなたの事だ、きっと既に天気予報か何かでしっかりチェック済みなんだろう。お察しの通り、今日は生憎の雨だ。雨ってのはいつの時も憂鬱なもんだ。人の士気を下げる力がある様な気がしてならないよ。


それはそうとして、さて、ここからが重要だ。人並み以上に聡明なあなたのみならず、人並みの教育とそこそこの経験をお持ちの方なら誰でも、こんな天気の日には傘を持って出掛けるだろう。傘があれば、大事なお召し物も大きなお荷物も、濡れは最小限で済む。


当然、多くの人が傘を差す。おかげでほら、駅前通りは傘を差す人々でごった返してる。普段はそれ程気にならない道幅も、こんな日ばかりは憎たらしい程、細く狭く感じられる。人々はのろのろと歩く。その中には、天気予報に言われるままに傘を持ってきた人も、或いはたまたま鞄に入れっぱなしの折り畳み傘に助けられた人もいるだろう。偶然か必然かはともかくとして、傘に助けられた人は多い。

もしかしたらその中には、傘を持たずにびしょ濡れで右往左往する人々の姿を見て、優越感を噛み締めている不届き者もいるかもしれない。不幸にも傘を忘れた人々は、のろのろと歩く傘の群れの間を縫う様にして、或いは列の両端をはみ出して、車道の端を急ぎ足で駆け抜けていく。髪や衣服を濡らしながら、ズボンの裾に跳ね上がる水しぶきにも構わずに。

そんな彼等を横目で見ながらほくそ笑んでいるかは知らないが、傘を差す彼らはとにかくのろのろと歩く。いつもの何倍も長く感じられる道のりに苛立ちながら、それでも行進からはみ出そうとはしない。列の中のある人は、列にすら入れずにずぶ濡れになった人を心の中で笑い、自尊心を保とうとしているかもしれない。そうやって、長い行進をやり過ごしているかもしれない。しかし長い、苛立ちの種との戦いは長い。




空模様を知るのに、実は勇気はこれっぽっちも必要ない。肝心なのは、空模様を知った後の事だ。


傘を差す勇気はあるかい?
ずぶ濡れになる勇気はあるかい?


大事なのは、選択する事。もしも何となく、覚悟もないまま部屋を出たならば、きっと雨との戦いも、苛立ちの長い行進も、あなたは乗り切る事ができない。


これは大袈裟な話じゃない。
傘を持つか、持たないか。あなた次第だ。



ただし、このまま外出を止めるって選択肢は、無しだ。仮に今日、この雨をここでやり過ごしても、明日明後日にはまた雨が降るかもしれない。明日も明後日も、同じ選択を迫られるのなら、今ここでやり過ごすのは賢明じゃない。

何よりも、あなたはもう外出する準備を済ませてしまっている。あなた自身の意志でここを出るつもりで来たんだから、その責任は自分で持つのが筋だろう。何となく来た、なんてのは通用しない。賢明なあなたなら解るだろう。さぁ、覚悟を。外は土砂降りの雨だ。それだけは間違い無い。