僕等は知らない間に、色んなものを失くしてしまう。
優しさだったり、思い遣りだったり、厳しさだったり、懐かしさだったり。
気持ちは、留めて置くのが難しい。気が付くと形を変え、その度に僕等は、哀しんだり、やり切れない気持ちになったりする。
繰り返しの毎日の中で、それは少しずつ鮮度を失ってしまう。
走り出す列車のベルや、すれ違うバイクの音や、溢れかえる足音の中に埋もれて、いつかは何処かへ消えてしまう。
忘れない為に、或いはそれが思い出として美しく残り続ける為に、どうにか手を尽くそうとするけれど、それが気休めでしかない事にも、とっくに気付いてしまっている。
変わらないままの未来を望んでいたのは、もしかしたら僕の方で、それを口に出せずにいる事は、とても卑怯な事の様に思えた。
約束を望んでいるのは、きっと僕の方だ。
指切りをしに、行かなくちゃ。こうしてはいられない。
雨はもう上がっている。
