交差点を渡っている途中でさ、ふと、見えたんだよ。

風船さ、赤い風船。
それが、ぷかーって浮かんで、ビルとビルの間を、彷徨ってた。

その辺で配られてたんだろうな、それを誰が離してしまったのかは、分からないんだけど。

さして大きくはない交差点だからさ、すぐに渡りきってしまった。結局、見えたのはほんの一瞬。だから、あの風船が何処から来て、あのまま何処へ行ったのか、全く分からないんだけどさ。

その風船がどうして、頭から離れないのか、考えてみたんだよ。


その時感じたのは、いわゆる親近感というか、共感に近いものだった。シンパシーみたいな、そんな感じだ。

溢れそうな人の中で呼吸をして、流れ続ける街の中で生きて、動き出した交差点の真ん中で急に、そんな事を感じたんだよ。

誰かと生きている様で、結局みんな、ひとりぼっちだよなって。

何処へ向かうか、決めている気になってさ、実は何処も、行くところなんて、ないんじゃないかって。

みんな、ひとりぼっちで、寂しがりだ。 けど、ひとりじゃ何も、見つからないし、何処へも行くところなんて、在りはしないんだな。


でもさ、何処かへ行くために、目的や理由がなくたって、構いやしないとも、思ったりする訳さ。

或いは、その理由が、ひとりで居るのが寂しいからとか、誰かに会いたくなったからとか、そういう事でも、構わないと思うんだ。


あの時、交差点の向こうに、一体何が在ったんだっけ。
何処へ行こうとしていたんだっけか、思い出せないや。

あの風船は、何処へ向かったんだろうな。気になって、仕方がないんだよ。