飲み干してしまった
サイダーの空き缶を
手持ち無沙汰に握りしめながら
先刻から 何度と無く繰り返した自問に
そろそろ蹴を付けなくちゃと
私は考え始めていた。
物事が動き出すのは いつだって
何かに諦めが付いた時か
彗星の様に
良案が浮かんだ時だけなのだ。
茜色を帯び出した空を背景に
風に吹かれる度
無人のブランコは
音も無く揺れて
それは誰かの魂が
ブランコから飛び立った跡の様に
私には思えて仕方がなかった。
緩やかに飛び立った誰かの魂が
私には何だか 羨ましくて
折角 持ち上げかけた腰を
再びベンチへと沈めてしまうのだった。
彼は
今が一番だと
このままが これからも続けば良いと言う
彼は 永遠を容易く
いとも簡単に口にする
彼の言葉は 澄み切っていて
一切の迷いも 感じられない。
私は彼を
彼の言う永遠を
まだ信じ切れないでいる
生まれ育ったこの街から
見慣れてしまった この風景から
離れる覚悟など
そうそう簡単に できるものではない
何より
帰る場所がある事
裕福では決してないけれど
それなりに 不自由なく暮らせる
そんな今の生活が
私には 心地好いのかもしれない。
自由へと飛び立つ恐さ
この柔らかな束縛を
心地好い鳥籠を
離れるという 恐さを
私は何よりも恐れているのだ
そして
彼の言う 永遠が
永遠でなくなるのが
彼を喪うのが
恐くて仕方がないのだ
きっと。
薄い月が青紫の空に浮かび
冷たくなり始めた風が吹く
ブランコがまた大きく揺れた
私は重い腰を上げて
諦めを付ける事で
答えを出そうとしかけた
その時
揺れるブランコと 稲穂の向こうに
見覚えのある人影を 私は捉えた
買い物袋を 片手にぶら下げた
見慣れたその姿を
彼と解るまでに
そう時間はかからなかった
彼は 私に気付いていただろうか
砂埃を払い終えた頃には
彼は私のすぐ近くまで来ていた
彼は
空いている 片方の手を
私に差し出して
いつもの
少し頼りない笑顔を浮かべながら 言うのだった
『さぁ うちへ帰ろう。』
私は彼の手を取って
飛び立つ様に 立ち上がった
彼の頼りない その手が
私をここから 飛び立たせてくれる
そう 信じてみようと
私は思った。
言葉は儚く 頼りなくて
不安は繰り返し 心を攻めるけれど
永遠なんて きっと思う程
美しいものでは無いとしても
景色が変わり
季節が変わっても
その手をずっと 繋いでいよう
彼の言う 永遠が
ずっと色褪せない様に。
鳥籠の鍵は
ずっと前から 開いていた
飛び立つ為の羽は
最初からそこに あったのだ。
この街に
秋の知らせが吹いた その日
私はここから
飛び立つ事を決めた
物事が動き出すのには
何かに諦めを付ける事も
彗星の様な良案も
なくても構わない時があるのだと
私はその日 初めて知った。
サイダーの空き缶を
手持ち無沙汰に握りしめながら
先刻から 何度と無く繰り返した自問に
そろそろ蹴を付けなくちゃと
私は考え始めていた。
物事が動き出すのは いつだって
何かに諦めが付いた時か
彗星の様に
良案が浮かんだ時だけなのだ。
茜色を帯び出した空を背景に
風に吹かれる度
無人のブランコは
音も無く揺れて
それは誰かの魂が
ブランコから飛び立った跡の様に
私には思えて仕方がなかった。
緩やかに飛び立った誰かの魂が
私には何だか 羨ましくて
折角 持ち上げかけた腰を
再びベンチへと沈めてしまうのだった。
彼は
今が一番だと
このままが これからも続けば良いと言う
彼は 永遠を容易く
いとも簡単に口にする
彼の言葉は 澄み切っていて
一切の迷いも 感じられない。
私は彼を
彼の言う永遠を
まだ信じ切れないでいる
生まれ育ったこの街から
見慣れてしまった この風景から
離れる覚悟など
そうそう簡単に できるものではない
何より
帰る場所がある事
裕福では決してないけれど
それなりに 不自由なく暮らせる
そんな今の生活が
私には 心地好いのかもしれない。
自由へと飛び立つ恐さ
この柔らかな束縛を
心地好い鳥籠を
離れるという 恐さを
私は何よりも恐れているのだ
そして
彼の言う 永遠が
永遠でなくなるのが
彼を喪うのが
恐くて仕方がないのだ
きっと。
薄い月が青紫の空に浮かび
冷たくなり始めた風が吹く
ブランコがまた大きく揺れた
私は重い腰を上げて
諦めを付ける事で
答えを出そうとしかけた
その時
揺れるブランコと 稲穂の向こうに
見覚えのある人影を 私は捉えた
買い物袋を 片手にぶら下げた
見慣れたその姿を
彼と解るまでに
そう時間はかからなかった
彼は 私に気付いていただろうか
砂埃を払い終えた頃には
彼は私のすぐ近くまで来ていた
彼は
空いている 片方の手を
私に差し出して
いつもの
少し頼りない笑顔を浮かべながら 言うのだった
『さぁ うちへ帰ろう。』
私は彼の手を取って
飛び立つ様に 立ち上がった
彼の頼りない その手が
私をここから 飛び立たせてくれる
そう 信じてみようと
私は思った。
言葉は儚く 頼りなくて
不安は繰り返し 心を攻めるけれど
永遠なんて きっと思う程
美しいものでは無いとしても
景色が変わり
季節が変わっても
その手をずっと 繋いでいよう
彼の言う 永遠が
ずっと色褪せない様に。
鳥籠の鍵は
ずっと前から 開いていた
飛び立つ為の羽は
最初からそこに あったのだ。
この街に
秋の知らせが吹いた その日
私はここから
飛び立つ事を決めた
物事が動き出すのには
何かに諦めを付ける事も
彗星の様な良案も
なくても構わない時があるのだと
私はその日 初めて知った。