踏み出す事は ほんの一瞬の事なんだと思う。
一度踏み出したら それからはただ
何気ない日常が廻り始める。
僕等は流れていく日々の上を
まるで滑る様に進んでいく。
スライドする ありふれた風景
電車の窓から見る夕焼
何気なく交わす会話
不意に流れた曲のフレーズ
日常に それは幾つも転がっている。
街に溢れる人 物 音
それらが生み出す 一瞬の出来事が
僕等に 時々呼びかける。
すると僕等は思い出す
思い出と名付けた
しまい込まれていた記憶の塊を。
思い出は綺麗で眩しくて
時々ほろ苦い
けれど その全てがどれも
失くしたくない 大切な物。
なのにどうして
僕等は忘れてしまうんだろう
失くしてしまうんだろう
古い物から 一つずつ
時間と共に 一つずつ
僕等は思い出を 捨てないではいられないんだろう。
日々は 絶えず流れていく。
目を瞑っても
立ち止まっていても。
ねぇ ずっと一緒にはいられない
だから忘れない
けど 忘れないでもきっといられない
それでも構わない
隣で見ていられなくても
隣に違う誰かがいても
もしも いつかどこかで会えたとしたら
或いは これから二度と会えないとしても
其処にいた僕等は無くならない。
風の匂いや 光の色や
お互いの事さえ 忘れてしまっても。
今はまだ 過ぎていく毎日の何処かに
時々 思い出が顔を出すけれど
いつか
そんな強さを持てたらなって
そんな風に思うんだ。
それまでは 取り敢えず
ゆっくり歩く事にするよ
きっと大丈夫だと思う。
今日 この街に
春一番が吹いた
その風は
信号待ちの僕の前を
翔ける様に 通り抜けていった
信号が変わると
僕は何処かまだ 分からない場所へ踏み出した
そんな気がしていたんだ。
君の街にも この風が吹いただろうか。