入院生活~最初の試練~

 

先生と面談をした翌日のお昼前。

主治医の先生と看護師さん2人ほど病室に入ってきた。

いよいよ経管栄養の準備が始まった。

 

先生からは鼻から管を入れて、直接胃に食べ物を入れる方法と聞いていた。

ちょっと緊張はしたけど、そうなんだーくらいにしか思っていなかった。

 

いざ実物を見ると、管は思ったより太く長かった。

その時点で、もう怖かった。こんなの体に入れたくない。嫌だ。

でも、看護師さんもいるため強がって、怖いとは言わずに言われるとおりに動いた。

 

鼻から管入れるから上向いて。

のどのあたりに来たら水を飲み込むような感じでごくごくしてっと言われた。

 

のどに来た瞬間に激痛が走った。

言われた通り、一生懸命飲み込んだ。

早く楽になりたいから、無我夢中で飲み込んだ。

 

しかし、途中でもう強がることはできなかった。

痛い、やめて、もう抜いて。心のそこから思って叫んで泣いた。

暴れているのもあり、なかなか上手くできず結構時間がかかったのを今でも覚えている。

 

ようやく管の固定まで完了してひと段落した。

 

話せるくらいに落ち着いたとき、先生にお願いした。

もうご飯食べるから、、絶対に食べるから、、管を抜いて。これが嫌だとはっきり伝えた。

先生に自分の意見を言うのは初めてだったかもしれない。

それくらい嫌だった。

しかし帰ってきた言葉は優しくはなかった。

 

ご飯を食べないことは自傷行為と一緒。

それだけのことを自分にしてきたんだから、と。

 

先生は普段笑顔で明るくて優しいが、大事な時はとても真剣な顔になる。

そして、時々厳しいことも言われる。

 

この言葉を聞いて私は思った。

 

そうだったんだ。ご飯を食べないことは、自分自身で自分の体をいじめていることなんだと。

今まで考えてもいなかった。

 

そもそも、ご飯がおいしいと感じなくなった頃、

おいしくご飯が食べれない自分が食べるくらいなら、他の人がおいしく食べた方がよいと思っていた。

だから、自分をいじめてるなんて一切考えたこともなかったので衝撃だった。

 

そのあとも、先生と少し話をして、経管栄養とは別にカロリーが高い飲み物をご飯の時間に出してくれることになった。

1週間は経管栄養は外さないと言われたが、もう歯向かう口述はなかった。

自分のせいだから…

それが自分の中で納得できたから、もう受け止めるしかなかった。

 

その後、初めて管から食事をした。

食事といっていいのかわからないが、胃に食べ物が入った。

管を通ってく栄養は若干冷たく感じた。管に通っている間は、のどが冷やされて痛みが軽減されているような気がした。

今どこら辺を通っているのかな…と想像できるぐらい落ち着いていた。

もう、諦めていたのかもしれない。

 

のどの痛みが和らぐ、退屈な時間が潰れる、退院に近づく、と考えると食事の時間が少し楽しみになった。

 

しかし、変わらず退屈な日常に少しの食事時間。

のどにある異物、顔にテープで固定された管。

鏡で自分の姿を見ることはなかったが、想像するだけでも痛々しい...

あの頃には戻りたくない。今でもそう思う。

 

1週間して、約束通り経管栄養は外してもらった。

管がなくなった時の解放感は半端なかった。

約束はしっかり守ってくれる先生でよかった。

 

明日からはご飯を食べる。先生と約束もした。

食べなかったら、また経管栄養になる。

絶対全部食べて、できること増やして早く退院してやるー

 

とりあえず、病室の外に出てみたいな。