入院生活~はじまり~
子どもの体と心を治す病院は家の近くにはなかった。
家から車で3時間かかる病院を紹介され、すぐに母と行くことになった。
病院に着いて問診をしてそのまま入院が決まった。
立って歩いてることが不思議なくらい体は弱っていると言われた。
すぐに車いすに乗せられて、病院中を回りいろいろな検査を受けた。
検査漬けの1日だった。
結果や病名はその時は私には一切伝えられなかった。
検査がひと段落し、病室に入った。
病室は2人部屋でとても広かった。私のベッドと簡易トイレ、母用のベッドがあるだけだった。
すぐに私は点滴を3本つけられ、血管が縮まっていたためか、普通じゃありえないところから針が入れられていた。
長い管を血管の中に入れられていたので、それを抜いた時の内側が引っ張られるような奇妙な感覚は今でも鮮明に覚えている。
命の危機もあったため、一緒に来た母もしばらく近くにいるように言われていた。
しかし、私はそれが嫌だった。
こんな姿を母に見られたくない。母は私を見るときは笑っているけど笑ってない。
悲しい目をしていた。母が自分自身を責めているのも分かっていた。
お母さんのせいじゃない....
だから、私は病室から母を追い出した。
昼間は病室に入ってこないで、と。
後から聞いた話だと、母は昼間はショッピングモールや病院の待合室で時間を潰してくれていたらしい。
初日は入院に必要なものたくさん買ってきてくれたな。
今考えると、頑なに病室から追い出していたこと、申し訳ない気持ちになる。
入院して1・2週間は、まずは体を安心できる状態に戻すこと。
広い病室でただただ寝ている、トイレ以外立ち上がらない生活だった。
もちろん病室から出ることは禁止されている。
不思議なことに、ほとんど寝ていたためそれほど退屈ではなかった。
目が覚めても動きたいという気持ちもなく、ちょっとしたらすぐ寝れた。
携帯もゲームも本や雑誌も何もなかったが、その時は全く問題がなかった。
起きているときは遠くの窓から見える景色をぼーっと眺め、知らないうちに眠りにつく。
それほど体が疲れていたのだ。
しばらくして、命の危機を脱したのか母は地元に帰っていった。
ここから私の思ってもいなかった苦しい入院生活が始まった。