『風が吹く』
2人用台本
拓磨:男性
陽菜:女性
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拓磨(N):ひまわり畑の中で、君の白いワンピースが風にたなびく
拓磨(N):それがまるで絵画のように綺麗で、その瞬間から目が離せなくなった
拓磨(N):そんな僕を君が呼ぶ声が聞こえてくる
陽菜:おーい!!こっちに来てー!!すごく綺麗だよー!!
拓磨(N):そう言う麦わら帽子を押さえる君があまりにも綺麗で、僕はそっとカメラを構えて写真を撮った
拓磨(N):そんな僕に大きな声で不満の言葉を投げかけてくる。
陽菜:もう!こっちに来てって言ってるのに、拓磨は写真を撮ってばっかり!
陽菜:私の話、ちゃんと聞いてよね!
拓磨(N):そんな陽菜に僕は慌てて、声をかける
拓磨:ごめん!陽菜!でも君がそこに立ってる姿があまりに綺麗で、写真に残したかったんだ!!
拓磨(N):そう言った僕に、彼女は顔を赤くして麦わら帽子で顔を隠す
陽菜:何よ…そんな急に言わないでよ…恥ずかしいじゃない…
拓磨(N):その声が僕には聞こえなくて、声をかける
拓磨:なんてー!?よく聞こえなかった!!
陽菜:なんでもなーい!!それは良いから早くこっちきてー!!
拓磨:わかったー!!
拓磨(N):僕はひなに呼ばれた方に向かって歩いていく
拓磨(N):ふと、空に目を向けるととても青い空が広がっていて、僕はそれが幸せに感じた
拓磨(N):でもこの雲一つない空が僕に向かって告げてくる
拓磨(N):今、見ているこの風景は偽物なのだと…
陽菜:どうしたのー?拓磨、早くー!!
拓磨(N):そう言う陽菜は本当は、そこには居なくて…
陽菜:拓磨―?
拓磨:消えてくれ…
陽菜:拓磨?
拓磨:(被せるように)消えてくれ!!
拓磨(N):そう叫んだ僕の前から少しずつ陽菜が消えていく
拓磨(N):わかってんだ、もう陽菜がいないって事を…
拓磨(N):そんな時、何故か陽菜の最後の言葉を思い出す
陽菜:忘れないで…私が貴方のことがずっと大好きなこと…
陽菜:でも、私はずっと貴方のこと、思ってるからこそ、私の事、忘れて欲しいの
拓磨:何…言ってんだよ…忘れれるわけないだろ!!
陽菜:貴方には幸せになってほしいの…
拓磨:なんで、それが忘れると繋がるんだよ!!
陽菜:私のことを想ったまま、1人で生きてほしいくないの…
拓磨:でも…!!
陽菜:お願い…1人で生きようとしないで…
拓磨:陽菜…
陽菜:誰かと、幸せになってね…
拓磨:陽菜…?陽菜っ…!!
拓磨(N):そう言って陽菜は居なくなってしまった…
拓磨(N):僕はその言葉を思い出しながら、今、ゆっくりと考える
拓磨(N):今まで、何回考えても…どうしても陽菜の言葉を受け入れられない…
陽菜:私の事、忘れてほしいの…
拓磨(N):忘れられるわけがない…そんなわけないんだ…!
拓磨(N):陽菜は…陽菜がいてこその、僕の人生なんだ…!!
拓磨(N):それなのに、忘れる事なんて…すると声が聞こえてきた
陽菜:拓磨…
拓磨:陽菜…?陽菜!?どこにいるんだ!!陽菜!!
拓磨(N):そっと後ろから抱きしめられる感覚に驚く
拓磨:もしかして…陽菜…?
陽菜:拓磨…
拓磨:陽菜…陽菜…!!
拓磨(N):必死に後ろを向こうとする僕に陽菜が声をかける
陽菜:聞いて、拓磨
拓磨:なんで!!陽菜、顔を見て話を…
陽菜:(遮って)このまま聞いてね?
拓磨:なんで…陽菜…
陽菜:私はね、拓磨がこうやって1人でいる事、わかってたよ?
陽菜:私の幻影に縋る(すがる)って、わかってた。
陽菜:私ね?本当に拓磨に幸せになって欲しいの。
拓磨:陽菜…
陽菜:そして、忘れてなんて嘘だよ
陽菜:忘れないで…忘れずに、新しい人生を生きて…
拓磨:陽菜…でも俺は…陽菜以外を愛せそうにない…
陽菜:無理に愛そうとしなくていい…でも、それでも私は拓磨を誰かを愛してほしい
拓磨:陽菜以外を愛するなんて…
陽菜:お願い…誰かをまた、愛して…?
拓磨:陽菜…!!
拓磨(N):抱きしめてくれる陽菜の手を握ろうとするが、その手はすり抜ける。
拓磨:触る事すらできないなんて…!!
陽菜:いいの、触れなくて…貴方が幸せになってくれたら私はそれでいい…
拓磨:陽菜…
陽菜:私もずっと愛してるよ…だから、どうか幻影を愛さないで誰かを愛して…?
拓磨:っわかった、俺は陽菜を忘れない…でも必ず誰かを愛すると誓う
拓磨:忘れない…忘れずに生きていくからっ…!!
拓磨(N):そう言った僕の背中から、温もりが離れていく、その感覚に慌てて振り返る
拓磨(N):振り返った僕の目に飛び込んできたのは、とても綺麗に微笑む陽菜の姿で、思わず目から涙が溢れ出てくる
拓磨:あぁ…陽菜…僕は前を向いていくよ…君の言葉を忘れずに…
拓磨(N):そう言いながら僕は陽菜に向かって笑顔を向ける
拓磨(N):今の最高の笑顔で…