仕事が終わって、病院に着いたのは3時。
慌てて受付で聞いて分娩室の前に来たら、看護師さんが中から出てきた。
『弟さんですか?今、ちょうど生まれたんですよ?はい、どうぞ』
そう言って、勝手にオレの手のなかに、小さな小さな赤ん坊が渡された。
軽いのに重い。
ずっしりと腕に…違う重みがきた。
顔を見たら、潤くんそっくり。
やっぱり潤くんの子供に間違いない。
潤くん…生まれたよ、あなたの子供。
『じゃあ、ちょっと早く生まれてしまったんで、少し保育器に入りますけど、元気だし、すぐにお姉さんの元に戻れると思いますから、心配しないでくださいね?あっ、病室で待っててください。処置が終わり次第、お姉さん戻りますので…』
『あっ…はい』
看護師さんがにっこり笑って、オレの腕から、小さな赤ん坊は連れ去られていった。
ガラス越しに、保育器に入れられる様子をジッと見てたら、やっぱり他のならんでる赤ちゃんに比べたら、小さいな…。
…でも、一番目鼻立ちがしっかりしたイケメンだよ、潤くん。
ぼんやり眺めてたら、じんわり暖かい気持ちになって、そこを離れて病室で待ってたら、スッキリしたみたいな顔の姉さんが運ばれてきた。
『お疲れ様』
そう声をかけたら、笑ってオレの腕を叩いた。
『仕事だったんでしょ?来なくて良かったのに…』
『でも、ほら…1人じゃ心細いと思ってさ…本当は付き合うつもりでいたのに、結局、姉さん1人での出産になっちゃってごめんね?』
椅子に座りながら言ったら、姉さんの片目から涙が溢れて、慌てて顔を押さえる姉さんに笑った。
『でもさ、頑張ったじゃん。頑張ったけど…これから、どーすんの?より戻すにしろ、しないにしろ、潤くんに認知くらいしてもらったら、どう?』
オレの言葉に顔を押さながら、首ふった。
『これから、金もかかるし大変だよ?』
『…いい。潤くんといたときに、大概潤くんが出してくれたから、前に働いてた分は全額に近いくらい貯金出来てたし…贅沢しなきゃ、なんとでもなるもん』
『……それは姉さんの意見だよ。あの小さい子供はどーすんの?父親知らないまま生きるの?生まれるまではって思って見守ったけどさ、やっぱり潤くんには知らせるべきだよ。知らないとこで、自分の子供が育ってるんだよ?オレは嫌だけどね』
『もうさ…潤くんはどうせ、あたしを忘れて違う人といるでしょ?』
姉さんの言葉に…今は確かに違う人がいる…。
次に繋ぐ言葉が出なかった。
『いいよ…もうお互い違う道を進んだんだから、それでさ…潤くんが幸せならそれでいい』
少しトーンの下がった姉さんの声を聞きながら、姉さんはそう言いながら、潤くんを忘れたことなんて1日もないだろ?
多分…潤くんもそう。
違う人はいるけど…。
何かを誤魔化しながら、過ごしてる風にしか見えない。
結局、姉さんとの話は平行線で…子供の顔をガラス越しに携帯に残して病院を後にした。
少し経って、ちょうど潤くんと二人きりのロケの仕事になった時に、潤くんに声かけられた。
『にの、この間言ってた友達どーなったの?』
『ん?生まれたよ、無事に』
そう、生まれたよ、キミの子供がね、知らないうちに…知らないところで。
『そっか…良かったな』
タバコを手にとって答える潤くんに携帯を渡した。
『ん?』
『生まれた子供…可愛いでしょ?』
オレの言葉に、ジッと携帯を見つめる潤くんに…。
それ、あなたの子供だよって、口から出かかって、慌てて飲み込んだ。
『うん…なんか見たことあんなって思ったら、オレのちっこい頃に似てんな…』
フフって笑う潤くんに…。
そりゃ、あなたの子供なんだから。
『そう、誰かに似てるなーって思ったら潤くんだったんだよね…なんか変でしょ?』
…気づけよ。
オレの子供じゃないかって…。
…気づけよ。
生んだのは姉さんじゃないかって…。
『なぁ…にの…』
『ん?』
『にのはさ…前に、アイツとは音信不通だっつったじゃん?』
『…うん』
ちょっと心臓がバクバクしてる。
『今でも連絡ないの?』
『…ない』
『そっか…』
携帯を見つめてた潤くんが、オレに渡しながら笑った。
『この前、全然、知らねぇ番号から電話があって…とっさに出たんだけど…もしもし?っつったけど、なんも喋らなくて切られたんだけど…アイツなんじゃねーかなって…』
潤くんが番号を表示させてオレに渡されて、番号を見たら…。
確かに姉さん。
日付を見たら、生まれた日。
なんだよ…。
本当は知らせたかったの?
それとも、潤くんの声を聞いて元気もらいたかったの?
『…そっか…そうかもね。オレにはわかんないよ…』
携帯を潤くんの手に戻しながら、溜め息をついて、ロケバスから外を見たら、子供服の店。
姉さん、ちゃんと準備出来てんのかな?
スタッフに時間に余裕あるか聞いたら、大丈夫だって言うから、店に入ろうとしたら、潤くんが、オレも付き合うよって入ってきた。
結局、二人で悩んだ結果、潤くんが選んだ数着の服を買うことにして財布出したら、潤くんがお金を差し出した。
『なんか、オレのちっちゃい頃に似てて、他人事に思えないから、オレからも…』
『……ありがと…伝えとく』
いっそ、潤くんの子供だって伝えてしまおうか?
『……潤くん』
オレが切り出そうとした瞬間、潤くんの携帯が鳴った。
『あっ、ごめん…電話だ…』
店の外に出て話す潤くんを眺めたら、なんとなく雰囲気から彼女かな。
…潤くんは違う道を進んでる。
もう…二人は戻れないんだ。
買ったベビー服を胸に抱えたら…妙に胸が熱くなった。
つづく。
にのちゃんがサイン出してるけど、不発だらけー(笑)
まだまだ続くにのside。
もう少し付き合ってねー。