ひえー!!
近付いてきた顔を押し退けようとしたら、コツンとおでこに店長のおでこがぶつかった。
『やっぱり、熱あんだ。変だと思った…ってか、最近、無理しすぎ…って、オレが追い詰めてたのか…』
そう言って、椅子に座らせてくれた。
……ビックリした。
っていうか、普通にやってくんないかな?
心臓がバクバクしてる。
こんなこと潤くん以外されないから、なんか変。
『あとさ、明日から、オレと東京戻るよ?』
『はい?』
えっ?なに?今、なんつった?
『向こうの店長が急に入院になってさ、こっちは任せられる人材もいるし、オレ、東京に戻ることになったんだ』
『……はぁ…店長が戻るのに、なんであたしまで?』
『お前の世話役はオレだからだよ。ちゃんと帰る準備しとけよ?』
…えっ?
あの…あの…。
『困りますっ!』
『は?』
『今さら、困りますっ!』
あんなに潤くんに待ってるなんて言わせて、どのツラさげて…今さら帰るの?
帰ってきちゃった、えへっ。
なんて言えばいーの?
あー、ないない。
あり得ない。
やだよー、そんなの気まずいよー。
『なんだよ、彼氏のとこ帰れるのに嬉しくないの?』
笑いながら店長は、品だししてるけど…嬉しいけど…嬉しくない。
1ヶ月離れても頑張れるって…潤くんとはやっていけるって思ったら、変な自信に繋がる気がした。
『…嬉しいけど嬉しくないです』
『変なやつ。オレは彼女んとこに帰れるの嬉しいけどなぁ』
なんて照れ臭そうに笑う店長に、なんだ意外に…。
『ぶっ…あまーいっ』
『うっせっ!お前みたいに素直じゃない女には、わかんないんだろうな。さあ、お前、今日は家に帰って寝て、明日の準備しとけよ?』
『えっ?でも…』
『そんなフラフラしてるやついても足手まといなんだよ』
なんて言われて、無理矢理追い出された。
仕方なく部屋に帰ったら、ポツンとテーブルに乗ってる缶コーヒーにメモ。
メモを取って、ソファに寝転びながら、走り書きの字を見つめた。
ごめん…ちゃんと考えてくれたのに、もうすぐ帰ります。
しかし…この人の!マークって、なんでこんなに可愛いーんだろ?
いつもはあんなに意気がってるのに、ひょっこり可愛い部分が顔を出す。
メールもそうだけど…。
なんか変な笑いが出てきて笑いながら目を閉じたら、そのまま深い眠りにつつまれた。
そっから、オレは気持ち切り替えて彼女を待つことにした。
その日も、舞台稽古が終わって帰ってきたら、真っ暗な部屋に相変わらず慣れない。
帰ったら、おかえりって言葉が聞こえてくるような気がして、いつも耳をすませるけど、かえってくるわけもない。
ソファに寝転んで、指輪を弄ってたら、玄関の方からドアの開く音がした。
えっ?慌てて起き上がったら、彼女が入ってきて…えっ?
なんか意味わかんなくてポカンとしてたら、彼女が笑う。
『電気も点けずに、変な顔してなにしてんの?』
…意味がわかりません。
え?ついこの前、名古屋でオレは東京で待ってるって言いに…えっ?
『ど…ど…どうしたの?』
なんか動揺して、どもっちゃった。
『……寂しくなって…帰ってきちゃった』
ソファに座りながら、ボソッと可愛い声で俯いて言う彼女にちょっとドキッとして…。
ウソだろ?
寂しくなって…?
そんな可愛いことすんの?
思わず抱き締めようと手を伸ばしたら、身体が震えてるのに気付いて顔を覗きこんだら、超笑ってるし。
『お前、ウソだろ?何笑ってんだよ?』
頬っぺた摘まんだら、吹き出して笑いだした。
『あはははは。ごめん、ごめん。ウソウソ。なんかさ、今日からこっちに戻ってくることになってさ』
『は?』
な…なんだって?
今、なんつった?
『なんか、せっかく潤くんに名古屋まで愛を届けに来て頂いたんですけど、無駄になっちゃいましたー…って…痛いよ~…』
摘まんだ手に、思いっきり力を入れた。
『ふざけんな、バカ』
オレの決断は?
東京で待ってるなんて、カッコつけて言ったオレの決断は?
『いひゃいよぉ~!あたひのしぇいじゃにゃいもん!』
『ぶっさいくな顔して何言ってっかわかんねぇよ』
グリグリ指に力入れながら、本当は素直に嬉しいって言えばいいのに、オレ。
なんか今さらで恥ずかしくなった。
『散々、人を振り回しときながら、そんなオチかよ?ほら、チュッってしろよ?そしたら、許してやる』
『てぇはにゃしてくれにゃいと、できましぇん』
『は?だから、何言ってかわかんねぇよ』
グリグリしながら、最後に思いっきり引っ張って離したら、頬っぺた両手で押さえてスリスリしてる。
『…酷い』
『…チュッは?』
唇差し出したら、頬っぺた押さえながらチュッってされた。
『足りません…』
『…意地悪』
頬っぺた押さえてた手がオレの頬を包んで、唇が触れた。
可愛いキスがオレを何度も包んで、あー…彼女がいる。
今ここにいるんだ…暖かい唇が実感させてくれる。
最近、よく彼女とする夢見てて…欲求不満なのかと思うくらいで…でも、夢の中のキスは冷たい唇で…いつも目が覚めると虚しさに襲われた。
でも今は…暖かい。
何度か触れた唇が離されて、彼女と瞳がぶつかった。
『……おかえり』
『……ただいま』
彼女のおでこがコツンとオレのおでこにぶつかって、いつもみたいに、鼻を擦り合わせて二人で笑った。
せっかくの決心覆されたけど…。
やっぱり…。
お前が傍にいんのが一番嬉しい。
つづく。
ぶふっ(*ymy*)
盛り塩じゃないよー。
結局、帰ってきちゃった(笑)