仕事終わって帰ったら、マンションの前で知ってる顔。
近付いたら…やっぱり、片思いしてた彼女。
ずぶ濡れの彼女…傘を差し出しながら、彼女の頬を伝う涙に、思わず顔を覗きこんだ。
『どうしたの?』
『…ごめん…迷惑だと思ったんだけど…』
ずぶ濡れの彼女をこのまま放置するわけにもいかない…。
仕方ない…。
こんな深夜に…彼女の留守にどうかと思ったけど…部屋に入れた。
『…風邪ひくから、シャワー使っていいよ?着替え、とりあえず、オレのパジャマ使って?ちゃんと洗ってあるし。服、乾燥機かけるから、乾くまで…ねっ?』
浴室に押し込んで、携帯弄った。
さあ…どうする。
彼女…言わなきゃわかんない。
わかんないけど…。
なんか…気持ち悪い。
そんなこと考えてたら、携帯が鳴ってビクッとする。
…彼女。
ごめんな、ごめんな。
心で謝りながら、携帯に出た。
少し酔ったような甘える彼女の声に、オレは少し…罪悪感。
別にやましくもないけど、なんでオレ、ほっとけない性格なんだろ?って、自分の性格を恨みながら、彼女の愛しい声を聞いていた。
不意に背後からする、片思いの彼女の声に、心臓が飛び上がった。
彼女の疑心暗鬼の声がする。
間違いなく疑ってる。
とりあえず…今、ゆっくり説明してる暇もなく、彼女に待ってもらう形で電話を切った。
さあ、この状況をさっさとなんとかしないと、彼女に電話すらできません。
『あっ、乾燥機んなか、多分、乾いてるから、見てみて?』
よーし、落ち着けよ、オレ。
なんかね、変な汗出てる。
彼女がうちにいることにじゃない。
アイツが、今、変な誤解をしていることに変な汗が出てるんだ。
…早くしないと、どんどん変な方向に進むから。
今、離れているこの状況で、顔見て話せないから、余計に誤解を招くから。
焦れば焦るほど、頭がうまく回転しない。
『ありがとう…乾いてた』
『あー、うん』
『潤くん、変わらないね。優しいとこ』
『…そっかな…でさ、なんでオレんとこ来たの?』
『うん…あのね、ちょっと…色々あったらさ…潤くん、思い出してさ…』
『そっか…もうこんな時間だし、タクシー呼ぶよ?』
携帯出して、タクシー呼ぼうとしたら、オレの手を握る彼女。
『もう少しいたらダメ?』
見つめる潤んだ瞳に…。
昔の想いが頭をかすめた。
あたしを抱き締めてくれたのは誰?
あたしを運んでくれるのは誰?
揺られながら、その揺れが心地いい。
頭がぐるぐるして…何がなんだかよくわかんない。
布団に降ろされて、あたしに触れるのは誰?
あたしを愛してくれるのはあなた?
あたしのおでこにキスして…。
瞼にキスして…。
絡む手に…絡む指に…身体に触れるこの手は…。
意識がハッキリして、顔を見た。
『……ぎゃー!!』
慌てて突き飛ばして、部屋の隅まで逃げた。
『…ってぇ…』
『なんで?なんで?』
乱れた服をギュッとした。
てっちゃん?
待って待って?
『お前が酔っぱらって…なんかわけわかんねぇこと言って、泣くから…変な気分になって…』
…思い出した。
後から電話するって、潤くんが…。
『携帯は?』
『ご臨終』
携帯をあたしに投げてよこした。
無惨にも、液晶部分割れちゃってるし。
よく考えたら、これ潤くんが買ってくれた携帯だ。
…電話くれたのかな。
『…っていうか、あたしになんかした?』
『…しようとしたら、突き飛ばされましたけど?あっ、瞼とおでこにはチューしたけど…あっ、ついでに胸くらいは揉んだかなぁ…』
頭かくてっちゃんに…。
うっ…なんか、なんか…あたしも、潤くんのこと言えないじゃん。
慌てて、おでこゴシゴシしたら、あたし見るてっちゃん。
『なんかさ、人をバイキンみたいに、拭き取るの止めて?』
『違うのっ!おでこは…』
おでこは…潤くんが一番大事にキスしてくれる大切な場所なの。
うっ…なんで、あたし…。
『泣くなよ…それくらい事故だと思えよ』
『思えないっ!』
どうしよ…涙がボロボロ出た。
潤くん…潤くん…。
……潤くん?
潤くんは何してるの?
『てっちゃん、携帯貸して』
『…ん』
てっちゃんの携帯で、潤くんの番号押した。
『……もしもし?』
誰だ?この携帯?みたいな、潤くんの声。
『…あたし』
『お前…自分の携帯は?全然、繋がらねーけど?』
少しイラついてるような声。
『投げたら壊れた』
『…なんで投げるかなぁ…誰の携帯だよ?これ』
『…てっちゃん』
あたしの言葉に、一瞬の沈黙が流れる。
『…今、一緒なの?』
『うん、一緒』
少し、深呼吸する音がして低い声がする。
『…今、何時だと思ってんの?こんな時間まで、なんで一緒なわけ?ありえねぇだろ?』
『そんなのこっちが聞きたいよ!なんで、うちに女がいんの?シャワーって何?シャワー浴びるようなことしてんの?』
『変な誤解すんなよ…友達が雨でびしょ濡れだったから、シャワー貸したんだよ』
『…その友達って誰?』
『……この前言った…片思いしてた彼女…』
なにそれ?
そんな人を、あたしがいない間に、うちに入れるんだ。
『…ふーん…なんかよくわかった気がする』
『わかってねーだろ?とりあえず、家に帰ってきたら、ちゃんと話すから』
『…別にいいよ。浮気した話なんか聞いたって楽しくないし』
『だーかーらー!浮気なんかしてねーよ!お前は、どうなんだよ?大体、なんで男といるわけ?とりあえず、離れろよ』
『…あたしもしたもん…』
『あ?』
『浮気!あたしもしたもん…お互い様じゃん…』
潤くんのため息混じりの、呼吸を整える音がする。
『本当にしたの?オレは、誓ってなんもしてないけど?』
怒った時に喋る、冷静な冷たい声。
…きっと潤くんは何もない。
でも、あたしは…。
おでこに…触れた。
涙が溢れた。
『ごめん…あたし…潤くんに会えないよ…』
電話を切った。
あたしは…あたしが潤くんがしてくれるキスで一番大好きな場所…汚しちゃった。
もう、してもらう資格がない。
つづく。
あー、今日は外もどしゃ降り。
こっちも、どしゃ降り?
只今、塩入コーヒー、塩、激盛りサービス中(*ノ▽ノ)イヤン
まだ入れますか?
ってか、しやがれの潤くん見て以来、変な妄想がグルグル回ってますが…ww