宝物がたくさん
「去年の最後のフォルマシオン・ミュジカルのグループ授業のとき、
「お渡ししようと思って用意していたのですが」
そういえば、最後の授業は猛暑でキャンセルになったのだ。
生徒のお母さんから何かを手渡された。
紙袋も、箱も、可愛くて、胸がキュンとなる。
Louis FouquetのPâtes de fruits。
私はこのショコラティエ・コンフィズールのことを知らなかったのだけれど、
何から何まで最上級っぽい。
授業が終わってから、私は最後まで教室に残っていた、
お菓子をくださったお母さんの娘さんに言った。
――さっきは時間がなくて開けられなかったけど、開けてみるわ。何が入っているの?
――Pâtes de fruits。
箱を開けると、色とりどりのおいしそうなPâtes de fruitsが、たくさん並んでいた。
「ありがとう」
そう言って、私は かがんで、背の低いその生徒のおでこにキスをした。
ふと外を見ると、教室の戸口に、さっきからとても小さな女の子が二人、教室の中を覗いていた。
誰だろう……
彼女の妹たちだった。
幼稚園か、まだ保育園くらいだろうか。
小さくて、華奢で、本当にかわいらしい。
その横には、お父さんが立っていた。
私は思わず、
「あなたには、宝物がたくさんありますね」
と言った。
お父さんは、にっこり微笑まれた。
Louis Fouquetのことは知らなかった。
思いがけず、こんな素敵なプレゼントをいただいた。
教室で子どもたちと音楽をして、
思いがけないものを手渡される。
小さな生徒のおでこにキスをして、
その向こうには、妹たちがいて、
その隣でお父さんが微笑んでいる。
そんな何気ない一場面が、あとになって心に残る。
仕事を定年退職したら、
こういう嬉しいサプライズは、なくなってしまうのだろうか。
そう思うと、少し寂しいな。
そして今日は、そのPâtes de fruitsを食べすぎた(笑)