日常の出来事。
長男がうちにいた時には、同じ敷地内に立つマンションの別の棟に
仲のいいお友達がいてよく遊んでいた。
14才の次男も、トゥッサンのバカンス中の今、
毎日のように、マンションに住む幼なじみと出かけている。
同年代のお友達が近くにいると言うのは、
とてもいいことだ。
さて、わたしは今日、お散歩に出かけた。
前から男子二人にはさまれた形で女の子がひとりいる3人連れが
近づいてくるのが目に入った。
次男のように黒っぽい服を着ている子がいると思ったら
まさしく次男だった。次男はわたしに気がついていないようだった。
どんどん近づいてきた。わたしはマスクをしていた。
どうしようかと思ったが、
すれ違いざまに、わたしがにこっとして、手を振った。
次男と、その幼なじみはわたしに気がついて、微笑んだが
一言も発しなかった。女の子はかわいい子で、
不思議そうな顔をしていた。
すれ違ってから、母親なのだし、もっと社交的に声をかければよかったかもと思った。
わたしは今日、このマスクをつけていた。中にどんなフィルターが入っているのか
キルティングのように厚みのあるマスクで、話しても声が相手に
鮮明に聴き取れないマスクだった。これをしていると、ちょっと隠れたところから
世間を見ている気分になる。積極性が奪われる。
あとで、次男がわたしに声をかけなかったのは女の子といて照れくさかったからか、
わたしのことが恥ずかしかったからではないだろうかとふと思った。
なぜなら3・4年前にこのコートを買った時に、息子たちが目を丸くして
冗談だろ、頼むからそれを着て一緒に歩かないでほしいと言われた
コートを今日、着ていたからだ。実はこのコートを買う時はわたしも躊躇した。
袖口から20センチくらいの長さの銀色に光るファスナーがついていたリ、
デザインがハードでお化粧をびしっと決めたクールな女性が着るタイプの、
イタリア製のレオパード柄、フェイクだがアニマル柄のコートだったからだ。
このコートを買う時は迷った。
自分の性格とそぐわない服を着てどうすると言う思いと、
それを本気でカッコイイと感じたからだ。以前ショーウインドウで見かけた時は
こんな値段では絶対買わないと思ったものが
ソルドで半額になっていたという状況もあって店員さんとお話ししながら結局、
買うことにした。
一度、ひとつめの職場に来て言って、パーキングで親しい女性の同僚と話している時に
ユーモアのあるジャズ科の男性の先生がクルマから下りてきて、ドラマチックに
わたしに向かって言ったことがあった。
「おや、やんぱっぱ、今日はすこぶる素敵なコートを着ているじゃないか!」
その仰々しいほめ言葉に、親しい友人である同僚と、
顔を見合わせて大爆笑したことがあった。
でも二つ目の職場で、色味が派手でないので、全然大丈夫と秘書さんに言われ、
最近は着たくなったらそれを着て普通に外出する。
夕食の時に次男に話すと、次男は本当に私だと気がつかなかったらしい。
「コートを着ていたし、帽子をかぶってマフラーをつけてメガネもかけていたでしょ。
マスクもつけていたから、気がつかなかった。」
「女の子をママに紹介してくれなかった。」と言うと、「誰もかれもを紹介しないといけないって
いうわけじゃあないでしょ。」と言うフランス育ちっぽい答えがかえってきた。
「女の子があれは誰ってきいてたでしょう?お母さんだって答えたの?」
「うん。言った。」
次男は夫に似て朴訥で言葉が少ない。
「わたしのことなんか言ってた?」
"Il me semble qu'elle est trop mignone."(「わたしにはとてもかわいらしい感じがしたわ。」)
と言っていたと言う。そう言われると悪い気はしない。
たとえ、帽子かぶってメガネかけて、マスクをつけていたので、見えているところが
ほとんどなかったとしても。(爆笑)